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③久山と俺の会話(2分)

「おーどうだったよ」

俺と後輩ちゃんがオフィスに戻ると、
久山が二人に向かってのんきに声を掛けた。

「後輩ちゃん、大丈夫か。はるのに変な質問されてないよな」
「するわけないでしょ」

後輩ちゃんが否定しつつ、感想を述べた。

「とってもおいしかったです!ごちそうになりすみません。」
「あ、いやいやとんでもないよ!餃子美味しかったでしょ」
「はい!ほんとうにありがとうございました!あの、、すみません。トイレ行ってきてもよろしいでしょうか」
「あぁもちろん!」

後輩ちゃんはトイレに向かった。
久山は席に座ったままだが、少しだけ正面の俺の方に近づいた。

「で、どんな子だった?」
「え?」
「いや後輩ちゃん」
「あぁ後輩ちゃん…そうっすね。いい子っすよ。会話していて優秀なんだろうなって分かります。」
「ほうほう。まぁ大学も優秀そうだしな」
「ただ、、、ちょっと変というか。」
「変?どの辺が?」

説明が難しかった。

「いや。。久山さん、スラムダンク好きっすか?」
「は? スラムダンクって漫画のスラダン?」
「そうっす」
「好きだけど」
「誰が好きっすか?」
「三井」
「ですよね」
「もしくは仙道。あ、でも大人になってゴリとか小暮の魅力も分かってきたな」
「池上っす」
「は?」
「いや、あの子池上らしいんすよ。一番好きなの」
「あのディフェンスに定評のある?」
「はい」
「海南戦で牧のドリブルをカットして、でかした池上!って田岡先生に言われてた?」
「それです」
「引退の時に泣いている魚住に代わって……」
「それですそれです」

久山は下を一瞬向いた。

「変わっているな」
「下の名前、亮二っていうんすよ」
「あの子?」
「なんでですか。池上っすよ。池上の下の名前覚えます?」
「すごいな」

遠くから小走りで後輩ちゃんが掛けてくるのがみえた。

「お話の途中で抜けてしまって、すみません。」

「はるの、お前今日時間とってやって。ミーティングしてあげて」
「え?」
「パートナーだから、9月までは基本的に一緒に動いてな」
「はい」

何でもかんでも押しつけやがって。
久山のちょっとよそよそしい態度にいらいらしながらも、
俺は後輩ちゃんのスケジュールを抑えた。

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