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あなたはブンちゃんの恋、を想う①

一種の呪いなのではないかと思うくらい
誰かを好きになり、苦しみ、もがいたことはありますか?
そんな経験のある人にぜひ一度読んでいただき、その後じっくり語り合いたいなと思う本作。

好きの苦しみって色々あるので共感できない部分もあるのかもしれないけれど。
私はある種の精神安定剤とするほどに何度も何度も読み返している。
なぜなら主人公のブンちゃんが、大好きな人を前にとてつもなく苦しみボロボロになっていくから。
自分より大変な人を見ると安心しちゃう…っていう人間の良くない心理を、ド真正面から見事に突いてくるんです。

ブンちゃんの恋を読んでどう思ったか、なんだかどうしても誰かと語り合いたい、と思ったので、まずは一人で語り出してみようと。
そしてこの記事は、まだブンちゃんの恋を読んだことのない方向けにネタバレなしで書きますが、そのほかの記事はガンガンネタバレするのでお気をつけください。


ところで、好意って時に暴力だと思いませんか?
私は一方通行であればあるほど、そうだと思います。
もちろん誰かを好きになることは自由だけど。
好きな人が困惑するほどに勝手にボロボロになったり。〝好きな人が好きな人″を許せなくなったり。好意をもってくれた人を無慈悲に傷付けたり。

初めから好きになったり、好かれたりしなければ良かったって思って、また気持ちを拗らせていって未来を傷付けていくなんて、
ほら、とてつもなく暴力的。


物語の中心となるブンちゃん、三船さん、シモジは三角関係の幼馴染で、ブンちゃんの恋愛対象は女性。シモジくんは中学生の頃に亡くなっているオバケだったりします。この3人が、持つにはこぼれてしまうほどの好意でぶん殴り合い、周りの人をも巻き込み巻き込まれしていきます。
(と断言してはいけない。表現があまりにも偏っている…)

ブンちゃんと三船さんは、シモジくんの命日に決まって同じ時を過ごします。明確に描かれていないはずだけど、年齢は20代前半、学生ではないようだから10回くらいはこんな命日を過ごしていたのかしら。
好きな人に会える特別な日だから、ブンちゃんはめいっぱいオシャレして会いに行くけれど、三船さんに1ミリも好意なんて見せない。なんなら塩対応くらいの態度。
大好きだけど、好きだって絶対悟られたくないから気持ちをぐぐっと押さえ込むわけです。うーん、つらい。
そして叶わない恋心を持ち続けるのはしんどいから、その気持ちを捨てるために、あらゆる手段を試みます。
その手段が破天荒だなって、ありえないよねって、頭おかしいんじゃないのって、思って笑えたとしたら、あなたは幸せ者です。
地獄にはいろんな種類があるとして、この地獄の味を知らないなら、知らないでいる方が絶対良いに決まっています。

この話をすると、映画「愛ってなんだ」を思い出して、ほのやかに近しいものを感じたりするのですが、そうは言っても似て否なるものだと思うので、これについてはまた別の機会に考えようっと…。

さて話を戻しますが、オバケとなってブンちゃんのそばに居続けるシモジくんも、とんでもない拗らせ君。ブンちゃんのことが大好きで成仏できないとして、死してなお、ぶつけられない好意を持ち続けるっていうのも、とんでもない地獄なんだろうなって想像します。体験したくない…

三船さんは明るくて、ブンちゃんにとって太陽みたいな人。初恋相手のシモジ君が目の前で亡くなってしまうという、かなりショッキングな出来事を経験するものの、子供から大人になっていく過程で、一歩一歩噛みしめるように、着実に、恋とは何かを知っていく。
途中、不健全で不安定な部分も出てくるけれど、私にとってみれば、ブンちゃんやシモジくんの振り幅の方が大きくて、全くマシだと思うくらいに、ちゃんと傷ついて、ちゃんと愛を知って、自分の足で自分のために人生を歩んでいける女性だなと思います。

この〝自分の足で自分のために人生を歩んでいける″と敢えて書いたのは、ブンちゃんもシモジ君もそうじゃないと思ったから。
ブンちゃんは生きていく上で自分の軸がなく、三船さん以外は大事じゃないと断言できるほどに依存し過ぎている。
シモジ君はオバケになっちゃったけど、もし生きていたとしてもブンちゃんと同じような生き方をしているかもしれないな、と思ってしまう。なぜなら境遇が似ているし、ブンちゃんを好きになったひとつの要因でもあるから。
ただ違うのは、そこにブンちゃん以上の強烈でいやらしいエゴイイムが見え隠れしていること……
なのですが、これ以上はネタバレをしながらでないと話がふんわりしてしまうので、一旦ここまでにしておきます。

続きます。

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