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[ネタバレ]哀愁しんでれらを見た話。

アマプラで哀愁しんでれらを観ました。最近は公開日から程なくして配信されるので、公開される映画が限られる田舎民としては非常にありがたい限りです。
思いっきりネタバレをしておりますので、まだ観ていない方はぜひご覧になってください。好き嫌いが分かれるなぁと思いましたが、わたしはすきな部類の映画でした。この渦中にいると、色々な疑念もすべて当然のように思われてしまうのだな、と怖くもなりました。人はこうして狂っていくのかもしないなぁと考えさせられる映画です。

哀愁しんでれらは公開が決まって予告が解禁されたときから気になっていたのですが、近場の映画館では上映予定がありませんでした(たしか)。そうなるとコロナ禍を移動して遠くの映画館まで行くしかなく、公開当時はそんな勇気がなくて行かなかったような気がします。まだコロナ大丈夫かよって感じだったのではなかったかしら。
話は変わりますが、わたしは御伽噺がすきです。この映画もシンデレラはその後しあわせになれたのか、という見出しに惹かれました。映画の中でも小春の友人が言っていましたが、靴のサイズしか知らない女と結婚して王子さまはしあわせになれたのか。たしかにそれなー!シンデレラはとてもよい子に描かれておりますが、その部分を王子さまは知らないわけです。偶々舞踏会に現れた美人で可憐なシンデレラに一目惚れして、偶々めちゃくちゃいい子だっただけではないか。昔々、実はシンデレラと幼馴染だった王子様の話を書いたことがありますが、幼い頃に出逢っていた方が信憑性があるような気がしますよね。シンデレラのお父さんって実は裕福だったのだし。
さて話を戻しましょう。
主人公の小春は幼い頃母親に棄てられた過去を持ち、母のようにはなりたくないと思いながら児童相談所で働いています。そんなある日絵に描いたような怒涛の不幸に襲われ、家まで焼けてしまいます。困り果てて彼氏の家に避難したら、職場の先輩との浮気現場に遭遇。しかし捨てる神あれば拾う神ありです。とぼとぼと歩いていたところ踏切に倒れている男を発見。葛藤の結果、その命を助けます。その男こそ小春の王子様である開業医の大悟だったのです。
大悟は男でひとつでヒカリという女の子を育てており、ヒカリも小春に懐きます。出逢って一か月でプロポーズをされ、ヒカリも新しいママができたことに大喜び。小春は失ったすべてを取り戻すように、絵に描いたようなシンデレラストーリーを駆け上がっていくのでした。
めでたしめでたし。
とは、一筋縄ではいきませんでした。大悟はイケメンだし、娘想いのいい父親です。自分の命の恩人である小春のために、祖父の病院を世話し(なんと入院費タダ!)、自転車屋を営んでいた父の就職を世話し(なんせ家が焼けて職を失っています)、妹の家庭教師まで引き受けます(偏差値が低い大学に行くやつはクズだ!と言われて後に妹は後悔していました)。しかし一緒に暮らすうちに大悟の本性が垣間見始め、ヒカリの嘘つきな二面性が現れてきます。小春はいい母親になろうとヒカリのために心を尽くしますが、母親ができて赤ちゃん返りをしたヒカリの我儘が大爆発。ヒカリをいい子だと信じていた小春ですが、ある日ヒカリが筆箱を男友達に盗まれたと言い出したところから、疑惑を持ち始めます。いじめなのでは、と学校に相談をしに行った小春は、担任の先生から「お弁当を作れないようであればこちらで用意します」と言われるのです。小春は毎朝ヒカリのためにお弁当を作っています。そしてヒカリは空になったお弁当箱を持って帰ってきます。どうやらヒカリは悲劇のヒロイン面のかまってちゃんらしい。小春がおにぎりを握るために結婚指輪を外すのですが、それがいつの間にか置いた場所からなくなっている。その指輪を隠したのもヒカリでしょう。母親を幾ら困らせても自分は許される、という特権を確認しているとしても、自分の子供でもないのに我儘すぎやしないかねと思ってしまいました。わたしなら絶対に無理。というか自分の子供でも勘弁してほしいものです。
そんなある日、ヒカリの同級生の女の子が転落死します。そこに赤い靴で参列したヒカリを見て、参列者たちが小春を責めるような言葉を呟きます。小春はヒカリに黒い靴を履かせようと努力したのですが、ヒカリが頑として譲らなかったのです。同級生の女の子は、ヒカリがすきな男の子がちょっかいを掛けている邪魔な存在でした。教室の窓から突き落としたのも、実のところはヒカリだったのです。
小春はいい妻、いい母親を演じようと頑張るあまり追い詰められ、大悟が大切にしていたペットのウサギの剥製の耳を壊してしまい、それをヒカリに執拗に騒ぎ立てられたことで彼女に手を挙げてしまいます。大悟には言わないように口止めをするものの、父親に言いつけるヒカリ。それを知った大悟は母親失格だと詰り、暴言を吐き、小春を追い出すのです。絵の描いたようなモラハラ夫!娘を溺愛するあまり、娘の異常性には気づかないのです。全部ヒカリのせいなのに、小春がかわいそうすぎる。
家を出て行く小春にヒカリが追い縋ります。その場面が昔出て行く母に追い縋った自分に重なり大号泣する小春。こんな親にはなりたくなかったのに、と思いながら、ヒカリの手を払ってその場を去りました。実家に戻ると父と祖父と妹が仲睦まじそうにしています。それをドアの隙間から眺めながら、自分の居場所はここにはないと感じたのでしょう。小春は当て所なく彷徨い、大悟を助けた踏切で倒れてしまいます。遮断機が下り、警報音が鳴る。このまま死んでもいいかも、と思った刹那、王子様が助けに来てくれたのです。大悟は小春を抱き締めて、彼女がなくした結婚指輪を指にはめます。お前それどこにあったんや、と思ったけれど真相は闇の中。ヒカリがどこからか父親に差し出したのかもしれませんね。
小春も大悟もモンスターペアレントにはなるまい、と思っている節がありましたが、そこからの展開はモンペそのもの。ヒカリが構って欲しさに自作自演した靴の盗難事件で学校に乗り込み、勝手に校内放送した上に職員室で大絶叫。終いには男の子にヒカリが同級生の女の子を突き落とすところを見た!と絶叫されてしまいます。問い詰めるべきか迷ったふたりはヒカリを問い詰め「パパもママもだいすきなのにわたしをしあわせにはしてくれない!」と反撃を受けるのです。
そしてそこからは怒涛のラストスパート。あと8分くらいで終わるの?どうやって?と思いましたが、ふたりはヒカリがしあわせな世界を作るために、まさかの全校生徒を殺害する計画を立てるのです。大悟はヒカリの学校の校医であり、近々インフルエンザの予防接種がありました。小春はそれに目を付け、予防接種と見せかけてなんらかの薬物を生徒たちに接種したのです。全校生徒たちが教室や廊下で息絶える壮絶な校内で、親子三人幸せそうに授業をする小春たち。そうして小春と大悟とヒカリは家族三人だれにも邪魔されることもなく、しあわせになったのです。

めでたしめでたし。



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