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「分からないから。」で立ち止まりたくない。

なぜ、自治体行政にソーシャルワーカーがいるのか。

という問いを持ちつづけて早数年が経とうとしています。

小さな離島の自治体に、社会福祉士(通称ソーシャルワーカー)として採用を受けてから、ずっとこの問いに向き合ってきました。

こんな記事もいつだか書いていましたね。

行政ソーシャルワーカーとしての熱い思いは変わっていないようです。

そして、最近は最近で思うことがあるので、ここに綴っておこうと思います。

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「障がい福祉サービスなんてわからないよ。」という声を虚しく感じる。

ぼくは、1年目から直営の地域包括支援センターで相談援助の業務に従事している。

ケアマネジャー業務と権利擁護業務を担当する現役の行政ソーシャルワーカーだ。

地域包括支援センターでは、主に65歳以上の高齢者の住民さんの相談を受けて、介護保険サービスや金銭管理支援(日常生活自立支援事業や成年後見制度など)につなぎ、住民さんの生活を支えていく役割を持つ。

また、65歳以上の高齢者の方々だけでなく、介護保険の第二号被保険者である40歳以上65歳未満で厚生労働省が定める特定疾患を抱えるなどの生活課題を抱えた住民さんの支援も行なっている。

その中で、最近増えている相談が、何らかの障がいを持って生活している方が介護保険サービスと障がい福祉サービスのどちらを利用したらいいか迷う内容のものである。

一般的に65歳以上は介護保険サービスが、65歳未満は障がい福祉サービスが、それぞれ優先されるのだが、各自治体の担当課の判断で柔軟な取り扱いができる。

そこで、地域包括支援センターにはそのような迷う相談が入ってきており、職員が頭を悩ませている。

結論としては、障がい福祉サービスの担当課に判断を仰げはよい話なのだが、自治体行政に所属するソーシャルワーカーとしては黙っていられない。

ぼく個人が持つソーシャルワーカーとしてのプライドからだろうか。

たとえ担当している分野が高齢者福祉・介護保険の分野であろうが、ソーシャルワーカーは児童・高齢・障がい・生活困窮・医療・更生保護など、多岐にわたる分野を知っている専門職だからだ。

それもそう。

実際の国家試験には19もの数の試験科目があり、1つ1つの内容が浅くでも広く知っておかないといけないし、1科目も落とすことができない。

だから、現場にいる行政ソーシャルワーカーとして、

「障がい福祉サービスなんてわからないよ。」という声は虚しい。

そう感じてしまうのだよ。

「だったら、担当課に教えてもらえばいい。」で解決したとは思わない。

そう、まさにその通りなんだよ。

分からない制度やサービスがあったら、自主的に研修会を開いたりして、担当課の職員さんや障がい福祉の現場にいる相談員さんに教えてもらえばいい。

そうすることで、地域包括支援センターの相談業務の資質は向上し、住民さんにも適切な支援を行うことができる。職員1人1人の自己研鑽にもつながるのでいいことだ。

でもよ。

前にも書いたとおり、制度の事細かな部分を知らなくても、保健・医療・介護・福祉の各分野に関わる制度の大半を広く知っていることが、ソーシャルワーカーの専門性の1つなのではないだろうか。

そう考えると、自然とこんな感情が出てくる。

「だったら、担当課に教えてもらえばいい。」で解決したとは思わない。

制度の詳細は知らなくても、なんとなく「このキーワードが出たら、これを調べたらいい。」みたいな感覚がソーシャルワーカーにはあっていいのではないか。

単に教えてもらうほど容易いことはない。

けれども、制度について教える側も、もしかしたら「何を知りたいの?」「どんな内容がいいの?」疑問に思っていることが多い。

ここで話の的になっている障がい福祉サービスであれば、

「障がい者手帳の取り方を知りたい。」
「障がい支援区分の申請方法を知りたい。」
「障がいサービスの内容や対象者を知りたい。」

などなど、色々な角度から制度を見ることができる。

それに、「申請方法などの手続きのやり方が分からないので教えてくれ。」と言っても、そこには手続きをすることでどのようなサービスを利用できるか分かっていることが前提の話になる。

もしかしたら、担当課につなぐだけで精一杯の現場なのかもしれない。

方法や内容はともあれ住民さんの役に立てればそれでいいのかもしれない。

けれども、単に担当課から教えてもらうだけではないことに気付くことができる、そんな行政ソーシャルワーカーでありたいと改めて思った。

横断的な支援を展開していくことが、行政ソーシャルワーカーの真髄なのではないだろうか。

そこで、振り出しに戻るが、

なぜ自治体行政にソーシャルワーカーがいるのか改めて考えてみる。

1人の行政ソーシャルワーカーとして、分からない制度を「ただ分からないので教えてくれ。」では情けないと思っている。

まずは、分からないなりに分かる部分まで把握すること。

サービスの内容や申請様式は分かっているけど、申請方法や他の諸制度との関係が分からないくらいのレベルまで持っていきたい。

「ここまで分かっていて、ここからが分かりません。」が理想の形だろう。

単に「担当している分野ではないので。」という横流しではなく、しっかりつないでいくこと。

そして、制度と制度を、担当課と担当課を、つなげることで、住民さんの生活を豊かにしていく。

もしかしたら、それはソーシャルワーカーが広く浅く保健・医療・介護・福祉の各分野に関わる制度を知っている専門職として持っているスタンスなのかもしれない。

広く浅く知っているから、そこから引き出しを拾い上げるのがソーシャルワーカーの専門性で、そこで得た引き出しを担当課につなげていく役割があると考える。

そこに、行政ソーシャルワーカーの真髄を感じている。

最後に、こんなことを呟いて終わりにしたい。

「分からないから。」で立ち止まるソーシャルワーカーには、なりたくない。

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今回は、ちょっと日頃の現場で感じていることを綴ってみました。

やはり行政ソーシャルワーカーとして、日頃は携わることにない分野にもしっかり目を向けておくことが大事だと思いました。

そして、他職種の同僚にも声をかけながら、横断的に動き回れるソーシャルワーカーでありたいです。

こんな感じに、これからもソーシャルワーカーとしての悩み・葛藤・想いを綴っていこうと思います。

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