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小さな島と東京にある便利さと豊かさをそれぞれ

私は現在、沖縄県のある島に単身赴任をしています。
その島はコンビニはおろか、信号機すらなく、買い物に出かけるには30分ほどフェリーに乗って隣の島に行かなくてはいけません。
隣の島は買い物するところも娯楽施設もたくさんありますが、元々住んでいた東京近郊に比べると、物価は高く、品揃えも多くありません。

単身赴任前は徒歩3分以内にコンビニがありましたし、乗り物の時間も一本乗り遅れたとしても2時間以上待つことはありません。

便利か不便かでいえば、めちゃめちゃ不便です。
ちょっとした買い物をするためには島にある唯一の商店に40分ほど歩いて行かなくてはいけませんし、品揃えはコンビニの1/50以下といっても言い過ぎではありません。

そんな島に住み不便さばかりを感じているかというと、実はそこまで不便だとは思っていません。寮住まいで社員食堂もあるため昼食と夕食は格安で食べられますし、家電製品は一通り借りれるため、生活面での不便さが少ないというのは大いにあり得ると思います。

そして、都会と比べて圧倒的に豊かなものは、自然と生命の量です。
観光地というほど人の手が加わっていない島なので、南国の田舎といった装いです。洗練さは皆無ですが、人工物よりも自然が優位に立っているので、吹いてくる風にすら生命力があり、ただ歩いているだけで元気をもらえるように感じます。

この島にある豊かさは、都会的な生活面での便利さを手にすると無くなってしまうであろう豊かさです。自然の少ない都会は豊かではない。と言いたいわけではありませんし、この島の方が都会よりも豊かであると言いたいわけでもありません。
自然よりも人工物の方が優位にある都会は、それだけ不自由のない生活を営んでいける証拠ですし、エンターテイメント分野はやはり圧倒的に都会の方が豊かです。
自然の中で育まれる感性もあれば、都会だからこそ育まれる感性もあるはずです。
そして、その両方とも素晴らしいものであると思います。

東京だろうと沖縄の離島だろうとはっきり言ってしまえば、インターネットが通じ、スマホが使える状況なので、日常にそこまで大きな差は感じられません。暇な時間の過ごし方も変わらないですし、家族や知人に連絡を取る頻度も方法も変わりません。
それほど現代の日常はスマホに依存しているんだなと実感しています。

私には家族がおり妻と5人の子供は東京近郊で生活しています。
家族に会えないのはとても寂しく、いつでも会いたい気持ちは強くあります。それでも、スマホがあればビデオ通話ができますし、いつでもすぐに連絡が取れる安心感があります。
もし家族と離れて生活することになった時、インターネットが届かない場所だったなら、心配や不安が勝り、私は今の生活を選ぶことはできなかったと思います。
離れて暮らしていますが、毎日声が聞けて、顔が見られるので、物理的な距離よりも近くに家族を感じられます。
東京で働いていた時は、24時間連絡が取れる状況に不便さすら感じていたのに、離島では24時間連絡が取れる状況を有り難いと思っていますし、スマホという便利さが私の日常を豊かにしてくれています。

世界は驚くほど便利になりました。
特にインターネットが当たり前になり、通信速度に違和感がなくなって以降は、生活面が恐ろしいほどの速度で便利になっていっています。
そして、これからもテクノロジーによりさらに便利な世の中になっていきます。

便利になるということは、1つの作業にかける時間が減り、別のことに時間を使えるようになるということです。
おそらくですが、残業時間の総数は社会全体で考えれば減っていると思います。
だからと言って、作業量が減っているわけではなく、マルチタスクになり作業量はむしろ増えているように感じます。

日々の慌ただしさはなくなることなく、とんでもなく便利な世の中になっているのに、合理化や時間効率が常に叫ばれ続けています。
全ての作業、全ての事柄で、合理化や時間効率を追い求め続けることが本当に必要なのかを立ち止まって考える時期が少し前から訪れていると感じます。
離島に移り住み、日々の不便さを受け入れながら生活していると、便利さは生活を豊かにしてくれてはいるが、便利さを追い求め過ぎると豊かさから離れていってしまう危険性があるのではないかと思えてなりません。

今日もパンを買うためだけに、1時間30分ほど歩いてきました。
その道すがら放し飼いのヤギの親子が目の前を通り過ぎ、草むらには白い鳥がたくさん集まっていました。
海や自然を通ってきた風の肌心地は豊かな味わいでした。

30度近い気温なので、部屋に戻るとTシャツは汗でぐしょぐしょになっていました。服を着替え、スマホをみていると家族からのLINEがあり、簡単に繋がっていられる便利さを有り難いと思いました。

便利であることが必ずしも豊かであるとは限らず、便利であることで感じられる豊かさも、不便だからこそ味わえる豊かさも、両方とも人にとっては大切なものです。
世の中は便利な方向に加速し続けていくので、自分にとって行き過ぎないように便利さと不便さのバランスを取りながら、両方の豊かさを体験することが大切なのではないでしょうか。

そんな事を考えながら、外を眺めていると眠くなってきたし、差し迫ってやることもないので、お昼寝でもしようかどうか考えています。

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最後までお読みいただきありがとうございます それだけでとても嬉しいです ただ読んでくれただけで イヤ本当に読んでくれただけで十分です 本当に嘘じゃないよ