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four summer

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小説を書きました まだまだ途中ですが、読んで頂けたら幸いです
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記事一覧

Four Summer-1-

―あなたは暗いトンネルを  車で走っています。  車のスピードは  どんどんと加速していきます。  小さかった光が  どんどんと近づいてきています。  やがて光があなたを包んでいきます。  あなたはいつの間に―  僕は今日もダラダラ過ごす。  一日中ダラダラできるのは、夏休みが始まってまだ一週間しか経っていないからだ。もし最後の一週間になってしまったら、だらだら過ごすのはもったいないから、友達とキビキビ遊ぶ。残り三日になってしまったら、まったく手付かずの宿題をヒーヒー言いな

Four Summer-2-

 5時を知らせる寂しげな音楽が聞こえ、僕は目を覚ました。壁には昼間に見た最強カブト決定戦の対戦表が貼られている。僕の一回戦の対戦相手はりょういっさだった。 「ようやく起きたか」  体を起こすと、うえまりさんは僕の足元にあぐらをかいて座っていた。 「たこ焼きを食べるぞ」  うえまりさんはテーブルの上に置いてあったたこ焼き5箱を袋から取り出し、しゅうちゃんとけいちゃんの前に一箱ずつ置き、ベッドから降りた僕の前に残りの3箱を置いた。 「うえまりさんがおんぶして、部屋まで運んできてく

four summer-3-

 午前中はずっと布団をかぶったまま、何もせずに過ごした。  朝ご飯とお昼ご飯はたらふく食べた。朝ご飯はパンにマーガリンを塗って食べ、その後、ご飯に納豆をかけて食べた。お母さんはパンだろうとご飯だろうと、朝ご飯には必ずみそ汁を出してくれる。みそ汁を飲むとどうしてもご飯が食べたくなから、パンを食べた後にご飯も食べてしまう。  お昼ご飯はカルボナーラだった。お昼ご飯にみそ汁は白いご飯があっても出なてこない。僕はカルボナーラを2回おかわりした。  部屋に戻って布団を頭からかぶり、昨日

Four summer-4-

 静香と出会った日のことは幼すぎて覚えていない。どちらもお母さんのお腹の中にいたのだから、覚えていないのは当然だけど。小学校に上がる前までの記憶のほとんどに静香がいる。武士ごっこをやる時は、いつも僕は切られ役で、何度も何度も倒れなくちゃいけなく、ズボンが破れてお母さんに怒られた。公園でかくれんぼをした時は、僕が「もういいかい」と言っている間に、お昼ご飯を食べに帰られたこともある。木登りをした時だって、自転車で冒険に出かけた時だって、大変な目に合うのはいつだって僕だけだ。記憶の

Four summer-5-

 テレビ局の中は、知らない大人たちがたくさん歩いていた。僕は首から提げている入館証をすれ違う大人たちにアピールしながら、静香の後を付いて行く。テレビ局の中はどこも同じように見えて、もう一人では玄関に戻ることはできない。初めて来た場所だから方向感覚が失われているのか、それとも元々方向音痴だからなのかは分からない。ズンズンと早足で歩く静香についていくことに精一杯でいることが、もしかしたら道が分からなくなった一番の原因かもしれない。  静香は周りを見ることなく、真っ直ぐに進んでい

four summer-6-

 雨上がりのお台場は体にまとわりつくような空気で、走るには少し息苦しかった。大きな階段を降り、大きな橋の上をスマホを片手に全力で走る。静香は短距離も長距離も僕より速いから、追いつくことはできないかもしれない。夏休みの人ごみの多い中、静香の姿は見えたり見えなかったりしている。  無言でバックを持ち、控え室から出て行った静香の後を追って、僕と静香のお母さんも控え室を後にした。控え室を出るときに、静香と一緒にオーディションを受けた女の子達が楽しそうにおしゃべりをしているのが聞こえ