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【試し読み】定年間近のある日、1匹の猫と出会った父――その出会いが仕事一筋だった父の人生を変えた。『親父と猫 定年後に待っていた猫ライフ』

 4月24日発売のフォトエッセイ『親父と猫 定年後に待っていた猫ライフ』。発売までいよいよ、あと2週間ほど。

 本日は書籍の中身をちらりとご紹介します。

『親父と猫 定年後に待っていた猫ライフ』
目次。ふたりの出会いからが、写真とともに綴られます。

 見ているこちらがつい笑顔になってしまう、お父さんとるるちゃんの毎日。うらやましいほど相思相愛のふたりは、どんなふうにして出会い、その出会いはいったいどんな変化を、お父さん、そしてご家族にもたらしたのか。

 優しくてあたたかくて時にノスタルジーを感じさせる、家族の日常を描いたフォトエッセイ。ぜひ下記の試し読みから、チラ読みしてみてください。

冒頭 試し読み

■親父とるるの出会い

 この物語を始めるにあたって、まず、僕が知っている〝親父という人〞について話しておきたいと思う。

 僕が物心ついてからというもの、親父といえば仕事人間というイメージがある。わが家は兄、僕、妹、弟の4人きょうだいだ。それだけ子どもがいると当然家のなかはにぎやかで、きょうだい喧嘩も絶えなかったけど、笑いも絶えなかった。
 一方、親父はあまりおしゃべりなほうではなく、親父の口から冗談などもほとんど聞いたことがない。
 ときに厳しく、だけど基本は優しい、不器用な人だ。特に趣味もなく、仕事一筋で生きてきた。

 その親父が、この春、定年退職を迎える――僕たちきょうだいは、仕事を離れた親父がどうなってしまうのか、とても心配していた。僕をはじめ、妹以外は大学入学を機に地元を離れて、兄は京都、僕と弟は東京で就職したため、今実家にいるのは親父と母と妹の3人だけ。家族としてもずいぶん寂しくなってしまった。
「最近、お父さんが元気なくてね」
 定年退職の日が近づくにつれ、母からそんな言葉が出るようになった。親父にしては珍しく、「仕事を辞めると寂しい」とこぼすこともあった。親父なりに、やはり仕事がない日々が想像できないのではないか――。

 家族がそんな心配をしているなか、ある事件が起こった。
 そう、親父とるるが出会ったのだ。

   *************

 その日、親父はなじみのお弁当屋さんへとバイクで向かっていた。昼休みにその店でお弁当を買うことが、親父の楽しみのひとつだった。
 今日はなんの弁当にしよう、サバ弁当にしようか――そんなことをのんびり考えながら注文の列に並んでいると、数十メートル離れた車道で、何やら黒いかたまりがふたつ、動いていた。
 よく見てみるとそれは、1匹の黒い子猫と1羽のカラスだった。
 子猫とカラスといえば天敵……のイメージだけど、そのカラスは意地悪をする様子もなく、むしろ、車道にいて危ない子猫を安全な歩道のほうへと誘導してあげているように見えたという。
 元来動物好きな親父は、珍しくてほほえましいその光景にすっかり目を奪われてしまったそうだ。

 だがその矢先、別のカラスが1羽飛んできた――このカラスは、子猫の面倒を見ていたカラスと違って、子猫と仲良くする気はなかったようだ。子猫をつつきはじめたのだ。
(こりゃいけん!)
 それまで子猫とカラスの様子を見守っていた親父はいてもたってもいられず、並んでいた列から離れ、バイクで駆けつけた。バイクに驚いたのか、カラスは2羽とも歩道脇のフェンスへと飛び立った。
「大丈夫か!?」
 しゃがんで子猫の様子をよく見ると、まだ生まれたばかりと思われるほど小さく、一目でわかるほど衰弱していた。カラスもまだ近くにとどまって子猫を狙っているようだし、このままここに置いておくわけにはいかない。

 親父はバイクの荷台のボックスに子猫を入れ、ひとまず会社に戻ることにした。
(だけど、どうしよう。うちには連れて帰れんしのう……)
 そのとき親父が思い浮かべていたのは、母のことだった。先代の猫を亡くしたとき、母はひどく悲しんで、「もう動物とは暮らせない」とかねがね言っていたのだ。
 そんな母の様子を覚えていた親父は、子猫の身の振り方をどうしたらいいか途方にくれていた。

       **************

 ――お父さんとるるちゃん、ふたりにとってまさに〝運命の日〟となった、春先の出会い。ここから始まるふたりの、そしてご家族のストーリーの続きは、ぜひ本書でお楽しみください。

 4月24日発売の本書は、一部協力書店さまで特典カード付きもご購入いただけます。リストは下記をご確認ください。

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