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「#創作大賞2023」ハッピーエンドは眠りについてから ~ランタナ心の花~【第1魂】


あらすじ
  宮石 誠 新婚ラブラブ生活の真っ盛り。突然殺された。愛する妻を残してあの世へ…
気付くと目の前にはピンクのワンピースを着た女性が。あなたは死にましたとひとこと。
  そして天国へ行くはずがまさかの地獄へ!
誠は地獄に来る人間では無い為、天国へ行くことを許されるがとある条件付きだった。それは霊体のままで現世に行き死ぬべきではない人を5人救へという、訳の分からない条件だ。しかし地獄に居たくない誠は条件を飲むことに。
取り残された妻はどうなるのか、真を殺したもの何者なのか!誠と妻の馴れ初めを含め恋愛要素と命の大切(愛)さをテーマに書いた作品です。ハッピーエンドは誰のハッピーエンドなのでしょうか?それは本当にハッピーなのか…ハラハラドキドキの笑いのある作品に目が離せません。

【プロローグ】

人生いろんな事がある

楽しい

嬉しい

悲しい

寂しい

心の花は様々

あなたの心の花は

しっかりと

咲いていますか

          【カチンッ】
  男がカスタネットを叩いた瞬間、時間が止まった。
「よし歩道にもどして…っと。重てえなぁ」
  男は一人でしゃべりながら車道に飛び出していた少年を歩道に移動させた。
「 完璧! 」
  またカスタネットを叩いた。時間が動きだした。車道にはビュンビュン車が走りさり少年はキョトンとしてる。しばらくすると、どこかへまた歩きだした。
「もう飛び出すなよ」
  そう言って男はヒーロー気分に浸っていた。 そして携帯電話を取り出し、
「もしもし天塚さん二人目終了したよ、次の人教えてくれる?」
  すると電話の向こうから、天塚という女性の声。
「次の人はまたこちらから連絡します。しばらくお待ちください」
 と言って切られた。
「はぁ…」
  男はため息をついて適当に歩き出した。 彼の名前は、宮石誠二十六歳。 しかし今は二十四歳。 身長百七十センチ体重六十四キロ。 黒髪のロン毛。 そして…霊体。いわゆる幽霊だ。

【別世界   天国?地獄?】

「ごちそうさま」
  誠は、朝食を食べ終え空になった食器を妻の居るキッチンの流し台に置き、早矢華にキスをして玄関まで歩いて行った。
「あっ!まこちゃん!お弁当を忘れてる よ!」
  早矢華は誠の妻である。結婚して七ヶ月でまだまだラブラブだ。
「ありがと」
  誠は弁当を受け取った。
「まこちゃん、そろそろ髪切ったら? もう社会人なんだから二年前みたいなロン毛やめてね」
「なんでやネン!今はもう伸ばさないよ 。 あの頃は髪伸ばしたかったし結構流行ってたしね」
  すかさず早矢華はニコッと笑いながら言った。
「似合ってなかったよ」
「なんでやネンっ」
  出た!誠の『なんでやネン』『なんでやネン』は誠の口癖である。『なんでやねん』の発音がおかしいのだ 。 語尾の音が上がっている。それを早矢華は耳障りに思い、言わないでほしいとずっと思っていた。
「ねぇまたなんでやネンって言ったよ。 発音おかしいから辞めてね。変だよ」
「なんでやネン」
  誠は口癖だから仕方ないと直す気は無いと言う意味で、手を振った。
「じゃ行ってきます」
   もう一度頬にキスをして誠は玄関を出て会社へ向かった。早矢華は玄関の戸が閉まりきるまで手を振って
「今日も頑張ってね!まこちゃん」
  と独り言を。夜の帰りを楽しみにした。アパートの階段を軽快に降りて駅まで十五分の道のりを口笛を吹きながらなんとなく歩いていた。
   人生=何があるかわからない。
「ドン!」
  突然頭を鈍器で殴られ、その勢いでバランスを崩し倒れたところをすかさずナイフで数ヶ所何度も何度も刺された。  儚くも幸せと命がほんのわずかの時間で消えた。
  誠の閉じていた目がゆっくり開いた。春の暖かい日差しを浴びながら、心地良い風を感じながら昼寝をしていた。そんな気分だ。 体を延ばしながら呟き叫んだ。
「気持ちいいなあ。あぁ最高っ!……………なんでやネン!」
  誠は自分に問いかけた。頭を殴られて刺されて死んだはずだよな。
「死んだ?」
 自分の体をとにかく触ってみたが、怪我をしていない。
「どゆこと?」
  体を起こしあぐらをかき腕を組んで目を閉じ、目を覚ます前を思い出してみる。のをやめた。とりあえず冷静になり辺りを見渡した 。
「おっ」
  他にも人が三人居たが後は何にもない、ただ一面真っ白な世界。
「おはようございます」
  ゆっくりと誠に近寄ってきた薄ピンクのワンピースを着た綺麗な女性が誠に声を届けた。
「えっあっ、お…おはよ」
  女は飄々と言った。
「宮石誠二十六歳。あなたは死にました 」
  すかさず
「なんでやネン、体も意識もちゃんとあるし現に今こうやって人としゃべってるのに死んでたら、びっくりだわ」
...........
「ってかさ、ここどこ?」
  女は誠の感情に左右されないで落ち着いて答えた。
「ここは死んだ者が来る場所」
  誠は、意味わかんねー!と声をあげ、両手両足を広げ寝転んで目を閉じた。
  寝て起きたらまたあっちの世界に居ると思ったから。 というよりも戻りたかった。女は誠を相手にせず淡淡と話しだした 。
「あなた達はこれから、地獄と天国どちらかに導かれます」
  すると一人の男性が口を開いた。明らかに‘あっち系’だ。
「何でもいいからさ、早く終わらしてくれ 。成仏さしてくれや!」
  うるさい。誠は心の中でそう思った。
「…こちらを見て下さい」
  女が指さした先を見ると、真っ白な世界に五メートル四方の深さは全くわからない、真っ黒な穴がまたたく間空いた。そしてロープが穴を跨ぐように一直線に一瞬にしてひかれた。
「あなた達は、これからあのロープの上を歩いてください。渡りきれば天国。落ちれば地獄」
  女は当然の様に話した。 普通に考えて渡れるはずがない…、ロープは穴に垂れずに一直線に伸びている、結んであると感覚的に感じられない。ただ動かずピン張って浮いている。不思議ではあるが、そもそもサーカスの団員でもピエロでもないし、渡れる自信が全く無い。殆どの人が地獄行きなのではないか。誠はやっと体を起こした。
 そしてまたあっち系が
「何でもいいからよ。じゃ俺から行くぞ 」  
  穴の前に止まった。 誠はヤクザは落ちるっしょ。なんて思いながら見ていた。
「大山態志三十七歳。首を絞められ死亡」
   女はどうぞと口には出さず手で合図した。どうせ天国になんか行けやしない。自分でも解っていた。態志は若干震えながらも、ロープの上を一歩また一歩進み出した。。
  そしてバランスを崩した瞬間。態志は悲鳴もあげずに、ヒュっと果てしない闇の向こうに消えた。
「なんか良い気分はしないね。 ねぇキミは恐くない?」
  誠はもう一人の、女性に声をかけた。同い年くらいか。ちょっと誠の好みだ。
「………ふぅ~」
オレの声は聴こえていないのだろう。足がガダガタ震えているのを確認した 。
「利根川真希 二十四歳。車に跳ねられ死亡。 どうぞ渡ってください」
  誠がゆっくりと大きく息を吸い、ゆっくりと息を吐きだした。
  真希は穴ギリギリ前まで歩き、立ち止まった。深呼吸をし目を閉じ両手を左右に真っ直ぐ広げた。一呼吸置いてすーっと目を開き覚悟を決め歩きだした 。
「ん?」
  誠はロープと真希の足元を最初からなんとなくだが、ジッと見ていたからすぐに気付いた。真希がロープの上を歩いているのではなく、ロープが真希の足を置くその場所に移動をしているのだ。神に真希は地獄に行く必要がないと判断されたのだろう。三分程で渡りきった。
「真希ブラボー!」 誠は脳天気な言葉を投げかけた。次は誠だ。次は自分となるとドキドキする。犯罪だとか警察にお世話になった事も全く無いが。 しかしドキドキする。 ドキドキ?誠は胸に手をあてた。 心臓は動いてない、‘ドキドキ’は気のせいだ。しかし緊張と同様は隠せない。
「オレ、ガキの頃に親父の財布から五百円を何度か拝借してたなぁ。小学生の時、倉橋の消しゴムを穴に埋めたし、最近は空き缶をその辺に捨てたなぁ。 佐渡平にも新美と一緒にちょっとなんか、ああしちゃったかなぁ…」
  独り言が増えたしなんとなく心配になってきた。でもきっと大丈夫だと自分に言 い聞かせていた。
「宮石誠二十六歳 ナイフで刺され死亡。どうぞ渡ってください」
  そう言われ深呼吸をし自分を信じ一歩目をゆっくり踏み出した。今は死んだか死んでないかなんて気にもしてない。渡れるか落ちるかどうかだけだ。
「天国行きならオレの足の置く場所にロ ープが動いてくれるはずだよね」
  独り言を言いながら真希が渡る時を思い出していた。恐怖と不安になった気持ちの全てが足を怯えさせた。それでも一歩目をゆっくりゆっくり踏み出した。するとロープが動いてくれたのだ。
「おっ、おっお~~。天国だぁ~」
 真希同様にしっかりと渡りきる事ができた。
  よかったぁ。と膝に手を置き落ち着きを取り戻す。真希に聞いた。
「ねえ天国ってどんな所かな」
  真希はわかりませんという顔をした。代わりに薄ピンクのワンピースを着た女が答えた 。
「天国は、何でもできる自由です。 そして地獄は何にもできない自由です 」
 訳がわからない。とりあえず天国にこれから向かうのだから良いか。
「まぁ天国に行けばわかるか。さぁ行こう天国へ~!」
  誠は適当に左手を斜め上に挙げ指さして言った。
「あなた死んだのに生き生きしてますね 」
  薄ピンクのワンピースを着た女は誠の非常識さに呆れた。相変わらず真希は静かだ。まだ心残りがあり死にきれないのか。誠は明るく声をかけた。
「そうだ改めて、宮石誠  よろしくね。まこちゃんって呼んでね」
  と言った後、真希の左手をとり半ば強引に握手をした瞬間、
「うっ…」
  あきらかに真希の表情が変わった。小さな声が聞こえたと思った途端、
「やめてっ、離して!」
  真希は誠の手を振り払って、ドンと両手で勢い良く押し払った。
「えっ?おっとっとっととと…」
バランスをとりながらも押された方向に移動した。その先はあの穴だ。真希は大・大・大の男嫌い。誠は行く必要ない地獄へ落ちた。 な~んでやネ~ン。

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#創作大賞2023 #恋愛小説部門


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