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【書き起こし】海から見た地球

2020年1月24日(金)藤沢市立駒寄小学校で行われた「特別授業」を見学しました。

「海から見る地球~気候変動(きこうへんどう)と海洋プラスチック問題~」

プロダイバー・環境活動家の武本匡弘さんは、5年前から自ら操船するヨットで、探査を目的に航海をしています。ヨットでの旅で感じた海・空・風。。。「海洋プラスチック問題」という言葉を聞いた人は多いと思います。実際どのような変化が起きているのでしょうか。映像と共に学びました。


そして、授業を見学した後、武本さんがご家族で経営するエコストアパパラギに場所を移し、お話を伺いました。


----- 海洋プラスチックの状況について教えてください。

地球中どこに行っても、マイクロプラスチックがあるという状況です。僕は、赤道より北側の北太平洋を航海して回っていますが、プランクトンを網で採ってもマイクロプラスチックは見られるし、実際目視できる範囲でもプラスチックはいっぱい浮いています。

今回は、年末から1月の中旬まで、科学者と一緒に調査航海をしました。科学者と20日間船に乗って調査することは初めての経験でしたが、自分自身が想像した地球のプラスチックの状況にやっぱり間違いはなかったなと……。専門家からの知見を聞いて確信を得ました。それだけ地球はプラスチックだらけになっています。


----- プラスチックの海という状況ですね。プラスチックは、海中の毒を吸い込んで、それを魚が食べ、そしてその魚を食べる人間に影響を与えるのではないかと不安を感じています。実際はどうでしょうか?

海洋プラスチックの問題に関しては、問題は3つあります。

1つは魚が食べてしまっていることです。海に浮いているプラスチックを魚が食べて、それを人間が食べているわけだから、プラスチックが体内に入ってきているという問題。でも、プラスチックだけの問題だったら、食べても普通に排泄されるわけです。問題は、プラスチックに含まれている元々の化学物質、可塑剤といわれるものですね。これはおそらく少なく見積もっても20種類以上あると言われています。色を付けたり、強くしたり、燃えにくくしたりする為の薬がいっぱい入っていて、これが環境ホルモンといわれます。だから、人間が魚を取り込むことの心配のひとつは、プラスチックというよりもプラスチックに含まれている化学物質。これが、環境ホルモンだから気をつけたいということですね。

もうひとつは、それを人間が食べてどういう健康被害があるのかということに関して、まだわかっていないというのが不気味なところ。つまり人証例がとれていないので、具体的にどんな症状が出て、どういう被害があるのかということがなかなか答えられないという現状にあります。

三つ目は、もともと海にはいろいろな有害な物質があるわけですが、例えばDDTとか環境ホルモン、ダイオキシン、というものがいっぱい流れているわけです。それをプラスチック、特にマイクロプラスチックが吸着する。そういう性質が分かってきました。言葉を変えると「毒性を増す」という問題ですよね。

更にもう一つ加えさせていただくと、実は表層を漂っているプラスチック類は2割か3割で、7割から8割のプラスチックは海底に沈んでいるという現実です。まず海洋を漂っているペットボトルやごみがあり、その次に、海水を採取して顕微鏡で見るとマイクロプラスチックがいっぱいある。でもそれらでも見えないものは、海底に一杯堆積している。ちょっと想像を超える状況が起きています。


----- 駒寄小学校での授業で、子ども達に一番何を伝えたいですか?

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今日ご覧になっていて気が付いたと思いますが、子ども達はすごく純粋で、大人になったらだんだんなくなっていく正義感も強いですよね。だから、自分達が健康被害を受けたり、自分達がプラスチックで害を受けたりすることもあるけれど、自分達以外の人たち、例えば今日お見せした太平洋の島々の人たち、それからアフリカの国々、いわゆる開発途上国と言われている人のほうが被害は深刻だということ。そういうことを伝えたいですね。それから、人だけではなくて、動物も被害を受けているということ。これも伝えたいと思っています。

ただ、今日の授業で新しい発見があったと思いますが、子ども達の中に、「リサイクルしているから大丈夫」だという意見がいっぱいありましたよね。みんな「リサイクル、リサイクル」と言っていましたね。つまり、間違った情報を少しでも修正していくという義務が、私たち大人にはあると思いました。特に研究したり調べたり目撃している人たちは、本当のことを知らせなくてはいけないと強く感じました。

授業を聞いてどう感じましたか?


----- Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)のなかで一番大切なのがReduce(リディース)。つまり減らすということですよね。調べていくと、プラスチックが怖いということが分かってきて、ただ、選択肢がなかなかないんですよね。プラスチックに代わるものがなくて、パパラギさんみたいなお店が近くにあれば毎日通いたいんですけれども、選択肢が少ないのがつらいですよね。

そうだね。実際に選択肢を奪われているという現実があるんだよね。


----- 忙しい毎日の中で、どういうことに気をつけたらいいですか?

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「なかなかできないな」「敷居が高いな」と思われないようにしていかないといけないんだよね。もしヒントやコツがあるとしたら、我慢しなきゃいけないやり方は続かないよと。まずこれが一つヒントになります。だから、できることからやっていくということじゃないですか。

声として多いのは、「選択肢がない」というのと「現役で仕事をしていると時間がない」ということです。だから、できることはなんだろうということをまず考える。マイボトルだけは毎日持って歩こう。水筒とか魔法瓶みたいなものね。マイボトルを持って歩くという行為が、相当なCO2削減になるということが今日分かったと思います。ペットボトルを買わなくて済むからね。仮にそれから始めたとしましょう。そうすると大事なことは、「あ!こっちの方がいいや。こっちの方が気持ちいい」とか、それから「こっちの方が安く済む」とか、癖になってくる、やりたくなってくる、それが大事なんですね。

だから、我慢してやろうとすると続かなくなる。できることから、少しずつ進めていく。それから、「できたらこっちのほうがいいや」と気づくような日が必ず来るので、それまではちょっと頑張って継続してみるといいでしょう。

まあ、マイバックもマイボトルも忘れることはあるけど、例えば熱中症になるような暑い日にペットボトルを絶対買わないかいえば優先順位が変わってくるわけです。そういうときもありますよ。でも、できるだけ自分のくせにしていけば、エコライフを送られるようになってきます。


----- あと、授業の中で「海洋プラスチックと気候危機は無関係ではない」というお話がありましたが、なかなかそこまで深刻にとらえられないという人もいますよね。

台風が来たり、大雨が降ったり、みんな被害を受けているでしょ?その時にはみんな「大変だ、大変だ」ってなっているけど、まず、大切なのは、「どうしてそうなったのか?」ということではないですか。どうして気候変動?どうして地球は温暖化しているんだろう?と考えて原因を探れば、必ずプラスチックの問題にも当たります。

地球温暖化、気候変動、気候危機というのは、ニュースですごく取り上げられています。防災とか、逃げようとか、屋根補強しようだとか、どうかしようという報道はたくさんあるんだけれども、「なぜそうなったのか」というところになかなか視点がいかない。で、その原因が何かということを探ると、必ずプラスチックの問題にも当たるわけです。

やはりプラスチックは、作るだけでもリサイクルするだけでもCo2をたくさん出しますから。しかも、石油由来だということを考えれば、けして持続可能なものではないし、私たちがやっていることは持続不可能な行為だから、切り離して考えるのではなく一緒の問題として考えましょうということですよね。


----- 最後に、このお店について教えて頂けますか。どのような商品を置いますでしょうか?

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現在は、160種類以上のプラスチックフリー商品をそろえています。最近の技術で開発したセルロースのスポンジや、竹の繊維でできたカップ、つまり最先端の技術で作られて、プラスチックフリーを実現できているもの。それから、昔から日本人が使っていたもの。例えばたわしとか、洗剤の要らないリネンとか、へちまとか、どちらも環境にはすごくいいわけです。

なおかつ、それがベストかというとまだそこまでいっていないもの。例えば、今、扱っている歯ブラシは生分解するけれども、これが一番いいものではないです。つまり、ベターなもの。プラスチックで使い捨てするよりもまだいいと……。それから、ラップも使い捨てのラップではなくて、シリコンラップを扱っています。でも、シリコンは化学物質ですからベストではないですね。でも、サランラップを使い捨てていると考えれば、何百回も使えるわけですよね。だから、まだいいと……。

そのうちもっといいものが開発されるだろうということを願って、よりいいものを使っていこうということ。だから今このお店は、たくさんのプラスチックフリー商品をそろえているんだけれども、全部がベストではない。ベターだというものもある。

それから昔から使われているものを考えると、これはずっとベストだなというものもあって。まだまだ進化し続けている。でも、これでいいとは全然思っているわけではなくて、まだまだ進化して、そのほとんどは、ここにお客さんとして来てくれる人の声からそういう風に変わっていっています。だから大勢来てもらって、意見を言いやすいように気を付けています。


★この記事は、2020年2月6日に放送した内容を文章化したものです★



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