問1.あなたを”あなたたらしめているもの”はなんですか。
今日は月にいちどのY君(中一)との作文レッスンの日。Y君との出会いは4年ほど前。彼がまだ小学校4年生の頃で、私が作文教室をやる!ときめて、はじめての生徒さんだった。
読書は好き、ただいざアウトプットするとなると、考えがまとまらなくて…。という悩みがあったY君。とはいえ、数回レッスンをするなかで、「物語つくり」にすごく興味をもってくれ、そこからというもの、こちらが何を言わずとも、「次はこのテーマで書きたい。」と要望を伝えてくれ、結果、原稿用紙数十枚に及ぶオリジナルストーリーを書き上げてくれもした。
表現したい気持ちと、とはいえ、うまく考えをまとめられない状態、そのふたつがY君の中には、ある。
実はさいきん、好きだった「物語つくり」におい、行き詰まりを感じ始めたY君。お話が壮大になりつつあって、どうまとめたらいいかがみえなくなってきたとのことだった。無理に書く必要はない、というのが私の持論なので、これに関してもいったん休憩、ということにした。思いつくことがあれば、書き足していこう、ということにして。
それからは、いろいろなテーマを設定して、作文に挑戦してもらおうと思ったのだが、正直、それらに関しても、以前のように筆ががんがん乗る、という様子ではない。中学校1年生。小学校の頃とは違う生活リズム、学校生活、友人関係…のなかで、作文にまで意識がもてないという想いも、彼の中にあるのかもしれない、と考えていた。
「書く」モチベーションが持てないなら、レッスンそのものも休憩した方がいいのかなぁと思っていたのだけれど、とはいえ、レッスン前はいつも「受けたいです。」と言ってくれる、、、涙。
門戸は常に開いておきたい。こちらから閉じることはしたくない。では、今の私に何ができるかなぁと考えながら迎えた今日のレッスンだった。
立ち返った原点
考えがまとまらない、という悩みがあることを、お母さまからもうかがっていたし、私自身、Y君とのやりとりの中でそう感じる部分もあった。それと同時に、「考えや気持ち」が、たくさんたくさんY君の中にあることも、伝わってきていた。
そもそも、私が作文教室を始めた理由は、書くことで、他でもない、自分自身が「自分の気持ちを知る」練習を、してほしいと思ったから。
頭の中の無形の想いや考えを、適切な言葉にかえていく過程で、「自分という人」が形作られていくと思っているし、自分の頭で考える力を育てると信じているから。(これは大人になった私だって修行中の身だ)
だから、やっぱり、Y君とも、この部分を、もっと丁寧に続けていこうと思ったのだった。自分の内面に感度高く、感じた気持ちをいちいち言葉に置き換えていく習慣は、すぐには身につかないかもしれない。疲れるしね。けれど、意識することで必ずできあがっていくとも、私は思っている。
その伴走を、していけたらいい、と思っているのだ。
素敵な夏休みの様子がみえた
レッスンのはじめ、この夏休みを利用して、お父様と海外旅行に行ったことを話してくれたY君。その時は「楽しかったです。」という言葉が出てきたのだけれど、レッスンの1時間を通して、上記のようなことをもういちどスライドで説明しながら、最後にワークに取り組んでもらった。流れはこんな感じ。
書いてしまえばなんてことはない作業。でも、なかなか、これらをたった一人で、はじめから一人で、完遂することってできない。はじめは誰かと一緒でOK。でも繰り返していくと…これ、必ず一人でできるようになる。
事実、Y君も、この5ステップを経て、たくさんの言葉が出てきた。
***
羽田空港から香港に行く間に
静岡県上空を通ったので
きれいな富士山の写真を撮った。
綺麗に取れたので嬉しかった。
ニューヨークについて
地下鉄やホテルなどで
独特のにおいがして嫌だった。
飛行機の中で唇が乾燥して切れていて、
なおかつニューヨークの食べ物が
大きかったので食べる時に痛かった。
みんな信号守ってないので驚いた。
出国検査の時、英語が
ほとんどしゃべれないのに
急に呼び止められて困った。
毎日いろいろな新しい経験があって
退屈な時間がなく、楽しかった。
***
これらの言葉を見てね、わたし鳥肌がたったんですよね。「やっぱり、こんなに感じていることがあるんじゃん」と、強く感じたから。この習慣を育てるのは、何だろう。
ひとつは日記。(これについてはまたおいおい)
ひとつは、それに何らかの反応が示せる存在。大人でもいいし、お友達でもOKだとは思う。私がその役割を、担っていけたらいいな、とも思っている。
あなたを”あなたたらしめているもの”は、何ですか。
ここで、タイトルの問いに戻る。人が、その人である理由。個性が芽生える理由。これは結局、その人の「経験」が大きな要因ではないか、と思っている。その人が何を見て、何を体験してきたのか。それによって、人格が完成していく。よく環境が人をつくるって言われる。あれも、環境によって「経験する」ことが人それぞれ違うことを言い表している。
そしてもう一歩考えを深めると、経験って、単に事実だけ、ではなくて、”それを体験した人の感情”もあわさってできあがっている、ということが見えてくる。
例えば「テストで0点とった」そのときに「あぁ…やってしまった。」という気持ちを抱いたA君。
「よっしゃ課題がみえたぜ。」とスーパーポジティブな考え方をするB君。
同じ「0点を取る」経験と、そこに”くっついているその人の気持ち”がセットになって、ひとつの「経験」を構築している、と私は思う。
だから、やっぱり、経験と、その時の「あなたの気持ち」を大事にしてほしい。それこそが、”あなた”だと思うから。
なんだか抽象的な話になってしまった。けれど、Y君とのレッスンを通して、改めて「気持ち」「言語化」をキーワードにしたレッスン内容を構築していこう、と思ったというお話でした。
自分を知る旅、作文でやっていこう。
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