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大学生インターン目線で読み解いた #新しい価格の教科書

みなさん、こんにちは。ハルモニアのインターンの鈴木です。私がインターンとしてジョインしたのは2021年の12月。正直なところ、わたしは「価格」について何も知りませんでした。

「価格」とは私たちの日常にある当たり前であり切っても切り離せないものですが、ここについて深く考える機会はこれまでありませんでした。

そんななか『新しい「価格」の教科書』が発売されたので、この本を通して「価格とは何たるものなのか?」学んでみることにしたのです。

今回は、そんな私の視点で『新しい「価格」の教科書』を簡単にまとめてみました。価格について何も知らなかった私が、基礎からこれからの未来まで知ることができました。

価格についてまだ詳しく知らない人も、これからプライシングを活用していきたい人も...。全てのビジネスパーソンへ向けた「価格の教科書」となっています。

⏬『新しい「価格」の教科書』はこちらから⏬

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第一章 価格の基本


価格とは、売り手と買い手の合意によって決められた商品価値のことです。売り手にとって「売ってもいい額」と買い手にとっての「払ってもいい額」が重なる範囲を模索し、価格設定していくことをプライシングといいます。また、これは、マーケティング戦略4Pの一つでもあります。「払ってもいい額」は社会の状況や個人の状況によってニーズが変化するので流動的なものであるといえます。

さらに、これまでは企業側が決めるイメージの強かった「価格決定」も個人によって行われる時代になってきました。例えば、メルカリのようなフリーマーケット・アプリ。メルカリは、2013年に提供が始まったサービスであり、日本国内の8人に1人、1750万人が利用しています。
参考: https://jp.mercari.com/


日本の価格設定の現状については、こちらをご参考にしてください。


第二章 価格の歴史 
〜一律価格から「時価」「1on1」の時代へ〜

価格とはどのように誕生し、発展してきたのでしょうか。経済の発展とともに価格もそのものの形を変えてきました。その変化を価格のつけられ方に着目して3つの時代区分に分けてみました。

価格1.0の時代:個別交渉 
初めて貝殻のお金が誕生したのは紀元前1600年頃。それからの約3500年間は価格といえば個別に交渉して決める時代でした。これは取引ごとの利益を相互に最大化できるチャンスがあった一方で、一回一回の交渉に時間がかかりあまり効率がよくない方法です。

価格2.0の時代:一律価格 
商品に値札がつけられている時代のことで、現代人にとって一番身近な価格設定です。大量生産が可能になっていくのに合わせて、チェーンストアが台頭するなどのビジネスの規模がローカルから広範囲へと拡大していく時代でした。この方法は効率は良いですが、利益を相互に最大化できるチャンスが減ってしまいました。

私たちの当たり前になっている一律価格には、利益の最大化ができていないという問題が眠っているとは思ってもいませんでした。生活に欠かせないものたちがどのように価格設定がされているのか考えてみると新しい発見があるのかもしれません。

価格3.0の時代:変動価格
その時々で最適な価格に変更していく変動価格は、今まさに始まろうとしている時代です。これは一律価格による機会損失という課題の解決を目指して発展してきたものです。

この変動価格のベースとなるのは「価格差別」です。これは、同じ商品やサービスを異なるニーズの買い手に対して違った価格で販売する価格戦略です。価格を一律にするよりもより多くの収益を得ることができます。

例えば、書籍や日用品など数多くのアイテムを取り扱う、世界最大EコマースサービスであるAmazon。ここではオートメート・プライシングという価格設定支援機能を提供しています。これを使うと、出品者は商品の価格を販売状況に応じて自動的に変動させることや、他の出店者の設定している最低価格に合わせることなどが簡単にできます。

確かに、Amazonではよく同じ商品でも「昨日より今日の方がお得!」ということがよくありますよね。これまで「なんで価格が違うのだろう?」と漠然と思っていたのですが、この背景には価格3.0時代が関係していたのだとわかりました。

価格変動の発展は、時間軸での変化と、個人軸での変化の二つの軸で整理するとわかりやすいです。

①ダイナミックプライシング
時間軸に合わせて価格を変動させていくものです。例えば、米ディズニーの日付で入場料を変えていく取り組みがあります。カリフォルニアディズニーリゾートでは入場料金の変動制が2016年よりスタートし、大人1日入場券の料金が日によって104〜154ドル(2020年現在)の間で変化しています。
また、この価格変動は東京ディズニーリゾートでも2021年3月より導入されています。
参考 : https://media2.tokyodisneyresort.jp/home/tdr/news/release/201222.pdf

②パーソナライズドオファー:
個人軸に合わせて価格を変動させていくものです。例えば映画館などで導入しており、同じサービスでも買い手によって異なる価格が設定されている「学割」や「子供料金」があげられます。
このように価格が変動するということは、これまで固定されていた重要な足場がふわふわと動き出すことになります。流動的で相対的な状況に慣れ、いかに乗りこなしていくかがキーとなってくるのです。

私が普段からお世話になっている学割制度も、このパーソナライズドオファーが関係していたのだと知りとても驚きました。

第三章 価格3.0を象徴するプライステック 
〜動的に価格を最適化する「プライステック」による革新〜


変動価格を実現するには、人手だけでなくテクノロジーが必要となってきます。「プライステック」とは発展的なプライシングを行うためのデジタルやデータに関するテクノロジー群のことです。変動価格の決定に効率的に対応するために、これを自動化・効率化することがプライステックの役目となります。

プライステックのツールや提供企業は年々増えており、多様化しています。ハルモニアとネットプロテクションズが共同で作成し公表したのがプライステック市場のカオスマップであり、その中には価格を決める主体者やタイミングによって分けられた三つのカテゴリーがあります。

ダイナミック・プライシング:
これは売り手主導で時間軸で需要変動に対応するプライシングです。ホテル、観光、交通、Eコマースなどで適用されてきました。

プレ・プライシング:
これは買い手と売り手の双方が関わり、購入直前に価格決定されるプライシングです。オークションやフリマアプリが代表例となります。

ポスト・プライシング:
買い手主導であり、サービス体験後にその評価を踏まえた価格が決定されるプライシングです。「あと値決め」というサービスを提供するネットプロテクションズが一例としてあげられます。
参考:


また、これらのプライステックが発展した背景には、3つのテクノロジーの普及がありました。

①Eコマース
商品の購入やサービスの予約がインターネットを通じて行われることが増え、購買記録がデジタルデータとして蓄積されることによって、このデータを生かしたダイナミックプライシングが実現可能になってきました。

例えば、コインパーキングは看板に書かれた価格をみて駐車することが主流でした。しかし、近年では事前にWEB予約する仕組みが登場しています。アキッパなどの一部駐車サービスでは、WEB予約時の価格を変動させるダイナミック・プライシングも行われています。
参考:


②電子決済
そもそもお金は貝殻から始まりました。お金自体が徐々に変化し形を変えています。2010年代にはキャッシュレスやQRコード支払いと呼ばれる新しい決済方法が登場しました。これらの決済データの集積は、パーソナライズドオファーなど個人を軸としたデータ活用の可能性を広げていくでしょう。

③データ分析
2010年代にはデータ分析の技術やインフラが発展し、第3次AIブームとなりました。この中で、大量の購買データの分析が比較的手軽に可能になったことは、プライステックの拡大に繋がったということができます。

私たちの日常に溶け込み始めているこれらのテクノロジーは、プライステックの促進に大きく影響をしています。テクノロジーの変化によりプライステックや価格変動は徐々に広まっているのです。

第四章 ビジネスを大きく変えるこれからのプライシング

では、新しいプライシングの方法を取り入れ、プライステックを用いて自社のプライシングを進化させるにはどうしたら良いのでしょうか。

プライシングはビジネスにおいて重要な3つの要素、自社、顧客、従業員に影響するキーレバーです。しかし、プライシングはまだまだ未成熟な分野です。これまで企業の中で、技術・経験・組織に十分投資が行われてきませんでした。だからこそ、周りと差をつけられる成長の大きなチャンスが眠っている分野でもあるのです。

価格決定力の向上については弊社が無料で公開している以下のホワイトペーパーをご参考ください。
参考:「価格決定力」とは何か


プライシングはコミュニケーションとも捉えることができます。
プライシングはあくまでデジタルな話のように捉えられることが多いです。当然その側面もありますが、心理面や印象の側面も同等以上に大切です

例えば、設定された価格から人はメッセージを受け取ります。通常水準よりも高く設定された価格を見ると「高品質な体験ができる」という期待感が生まれます。反対に安く設定された価格を見ると「訳ありなのか?」という疑念が持たれます。価格設定は、売り手の自信の有無を伝えることになるのです。

プライシングはメッセージであり、双方向のコミュニケーションであるということを意識すれば、より受け入れられやすい設定を行うことができるはずです。

この視点は、買い手と売り手がそれぞれ最大限に満足のいく売買を成立させていくためにも非常に重要な観点になりそうですね。

 第五章 価格の未来
 〜プライステックで世界はこう変わる〜

価格3.0時代となり、さまざまな業界でプライステックが普及していく未来ですが、世界はどうなっていくのでしょうか。

プライシングとはインセンティブ(お得感)のデザイン。もっと多くの業界で、もっと多くの取引で価格が柔軟に巧みに活用されるようになれば、サステナビリティの向上に繋がります。例えば、スーパーマーケットやレストランで活用されれば、食品ロスの対策となり、食材のムダを抑えることができます。欧州では実際にダイナミック・プライシングの活用が進んでいます。オランダの最大手のスーパーマーケットチェーンであるAlbert HejinではWastelessというスタートアップと組み、食品ロス削減と収益向上を目的としたダイナミック・プライシングソリューションを食品小売業者に提供しています。

有限である地球の資源や私たちの人生の時間をムダなく、より良いマッチングを促していくことは、価格という仕組みの究極的な活用方法なのです。

また、プライステックを活用するための最大のボトルネックはマインドセットです。テクノロジーは整い、業界の規制も少しずつ緩和の方向に進んでいて、あとは実行するのみとなっています。しかし、業界に事例が少ないことから買い手の反応を懸念して一歩踏み出すのを躊躇する企業もあるでしょう。これはつまるところ認知の問題であり、人々に新しい価値観が示され、ポジティブな実体験があり、共感者が増えていくことで解決することができます。

今年、2022年は様々な業界でプライシングの在り方が動き始めています。弊社でまとめた2022年の価格改定予定記事はこちら。

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私は、正直これまで価格は「ただ利益のためにつけられているもの」と思っていました。しかし、この本を通して「価格の可能性」を知りました。
個人的には、「プライシングがサステナビリティ向上につながる」という視点はとても興味深いです。

確かに、良くも悪くも価格は人の行動を変えてしまう力があります。企業にも社会にも影響を与えることができる大きな力を持っているからこそ、慎重に、そしてきちんと思考をして決定していくべきものなのだと思いました。価格について何も知らなかった大学生が、価格について知り、そして何より興味関心を持つことになったのが『新しい「価格」の教科書』

・これまで知らなかった「価格」についてもっと知ってみたい!と思った方
・価格を通してビジネスの幅をさらに広げていきたい!と思った方

『新しい「価格」の教科書』が、新しいプライシングの世界を知る一歩目になるかもしれません。

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