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お薬手帳は患者さまと医療者の連携ツール

先日harmoのオフィスで、患医ねっと代表の鈴木さまに研修をしていただきました。

鈴木さまは、ご自身が身体障がいを抱え、がんに2度罹患しているため、薬局やお薬手帳をよく利用されています。

薬局やお薬手帳の使い方について多数の講演会を企画・運営されており、「harmoおくすり手帳」のプロダクトメンバーは患者さまの想いをサービスに反映させるため、鈴木さまに一人の患者さまとしてのリアルな声を教えていただきました。研修の一部を公開いたします!是非最後までご覧ください。

鈴木さま、よろしくお願いします。

■患医ねっと代表 鈴木 信行さま

鈴木:私は、生まれつきの疾患「二分脊椎」という身体障がいを抱えています。また、過去に2度がんに罹患した経験があります。20歳の頃、「精巣がん」に罹患し、24歳で再発、46歳で「甲状腺がん」に罹患しました。現在は、甲状腺を取り除いたので、毎日甲状腺ホルモン剤を服用しています。

すなわち、私自身が薬局やお薬手帳にお世話になっている立場なんです。
患者は病気が治ればいいのではないのです。その先にある日々の生活やその人らしい人生を、みんなで支えられる社会があってほしいと思っています。

そのために本日は、薬局やお薬手帳の使い方についてお伝えしますね。

(1)薬局の使い方について

①本当の薬局の利用方法とは?

本日は薬局の利用方法についてお話したいと思います。
私の意見としては、現在の日本は薬局の使い方がおかしいと感じています。
皆さんは、上手な薬局の利用方法をご存知ですか?

「薬局」と聞くと、処方せんを持って薬を受け取り、説明を聞き、副作用の状態を確認するということは、誰もが理解していますが、それ以上のことも重要だと考えています。

薬局は、薬を受け取るだけの場所ではなく、健康に関する相談ができる場所なんです。
かかりつけ薬剤師に、病院や他の薬局での問題について相談することができますし、さらに薬だけでなく、介護や福祉に関する相談も可能です。

実際に、薬剤師の方々は様々な勉強会に参加していますが、患者がこのような機能があることを知らないので、薬剤師に相談しないことが往々にしてあります。

患者の生活での困り事を薬剤師に言えるという状況が、薬局の本来あるべき姿なんです。お薬手帳に記録した患者情報を、医療者と共有するツールとして、より活用する必要があると思います。

②バインダーで作る唯一無二のお薬手帳

私はお薬手帳が大好きです。
お薬手帳は自身で作ってもいいことをご存知ですか?

私のお薬手帳はA5サイズのバインダーを使用しています。お薬の情報を管理するのはもちろんですが、健康診断の結果や、ワクチン接種記録も挟むことができます。

薬を多く服用している人は、紙のお薬手帳がすぐに満杯になるため、私はA5サイズのバインダーで管理しています。お薬手帳の基本情報には、アレルギー情報を含めて必ず最初のページに書く必要がありますが、バインダーだとその一枚を常に入れておけます。高齢者の方に「お薬手帳は自分で用意してもいいんだよ」と伝えると、だいたい驚かれますね。(笑)

(2)お薬手帳の使い方について

ここからは私が実際に使っているお薬手帳の使い方について説明します。

①残薬数は患者自身がカウント

私は通院日の朝、残薬数を数えてお薬手帳に書き込んでいます。そして診察室で医師に「今回これだけ薬が残っていますので、減薬していただけますか」と伝えています。
残薬数を医師に伝える作業は一般的には薬剤師の仕事かもしれませんが、患者自身でもできますよね。ですので、私自身が医師に、お薬手帳に残薬数をメモして伝えることで、医師や薬剤師も一目で理解しやすくなりますよね。

②患者自身が病名を伝える

重要なことは、患者自身が病名をお薬手帳に書くことです。

実は、薬剤師はあまり病名を知りませんが、多くの患者はそれを理解していません。本来は、患者自身の病名を伝える必要があるのです。

これも、お薬手帳に記載し、自分が病気をどのように認識しているのかを薬剤師に伝えることができたらより良いですね。

③治療計画を伝えて薬の品不足問題の解消

私は、医師や薬剤師に言われたことをその場でメモしています。例えば、「乳頭がんがリンパ節に転移しており、治療法として放射線治療を行う」というような情報をメモに残します。これのメモを薬局で開示することで、薬剤師も患者の状況を把握できますよね。

また、治療計画をお薬手帳に書くことで、薬剤師が患者の通院日や、次回の薬局の訪問日を把握でき、薬の仕入れを事前に準備をすることができます。

「3ヵ月後にこの薬の処方せんが来るからね」と事前に薬剤師に伝えることになり、薬の品不足問題は私の中では起きたことがないのです。このように、私自身が関わる医療関係者全員に、治療方針を共有するツールがお薬手帳だと思っています。

④お薬手帳ならぬ健康手帳

お薬手帳は、薬の管理だけでなく、健康に関することなら何でも書いていいと思っています。お薬手帳というよりは、健康を把握するための健康手帳に近いですね。
 
そのため、体調に異変があった場合は時系列で記録しています。
 
例えば最近、たまたま目の前にいた友人が突然、脳梗塞を発症しました。私は発症した症状を見て脳梗塞だと理解できました。その瞬間、即座に何時何分に何が起きたか、時系列をメモに記録しました。それによって、その後到着した救急隊に正確な情報を伝えることができ、その後、いまでは後遺症もなく生活しています。
 
これは大げさな例かもしれませんが、普段から健康状態の変化を時系列にメモしておくことはとても重要だと思っています。そしてそのメモを次回、病院へ伺った際に医師に伝えるようにしています。
 
私の健康手帳は、とても自由度が高くなっています。
自宅、診察室、そして薬局で、いつでも気になったことを自由に記載し、自己記録というだけではなく、情報共有ツールとして活用していく・・・これが、これからのお薬手帳に期待することです。
 

■研修の感想

鈴木さま、ありがとうございました。

 この研修を通して、お薬手帳が誰のためでもなく自分自身のためにあることを再認識しました。自分の健康に関する情報をまとめることで、自己管理がしやすくなり、医療者とのコミュニケーションもスムーズになるということが分かりました。 

しかし、医師や薬剤師など、白衣を着ている人たちを目の前にすると、緊張感があるため、何を聞いたらいいのか頭が真っ白になってしまう、という意見もよく耳にします。そんな時こそ患者自身のお薬手帳を活用して、自分の健康情報を積極的に提供することが重要だと学びました。 

今後は、患者さまと医療者とのコミュニケーションツールとして、harmoおくすり手帳の存在が活用できるよう、より良いプロダクトを目指していきます。全ての患者さまが安心して治療を受けることができるような世の中を創っていきたいです。