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インストラクショナルデザイン〜主体的・対話的で深い学びを作る〜

きっかけ:社会課題を子どもにどうやって伝えようか考えていたため
読んだ日:2021年2月
あなたに:学校の先生を目指す学生と学校現場で活躍されている先生方を対
     象に授業の作り方(インストラクショナルデザイン)について書
     かれた本です。旅行に例えるなら、旅先までの最短ルートを教え
     るというより、地図と観光情報をもとに旅行プランを組み立てる
     のを助ける本です。本書は会社などで人材研修やフリーのセミナ
     ー講師にも役立つ内容が書かれています。
※本書は15回の章に分けて説明(講義を想定して)されており、章ごとの関連や流れも参考になります。私は興味のあるフレームやツールの一部しか紹介していません。ぜひ、興味が湧いた方は、原本を読んでみてください。

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■教育目標の分類
教育目標の分類として世界的にポピュラーなのは、B.S.ブルームによる教育目標の分類学(タキソノミー)です。生物に哺乳類、爬虫類、両生類といった分類があるように、教育目標にも分類と体型があるという理論です。ブルームはまず、認知的領域、情意的領域、精神運動的領域の3つに教育目標を分類しました。それぞれ、頭と心と体に対応します。中でも認知的領域は、L.W.アンダーソン、D.R.クラスウォールらによる改訂版が開発されています。それでは、覚えるような学習(記憶する)から覚えたことを生かして新しいアイデアを考える(創造する)まで、学んだ結果、できるようになることにもさまざまなレベルがあることが示されています。

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認知には、認知活動を俯瞰し、認知活動を修正・調節する働きがあり、メタ認知と呼ばれています。自分がどのように学んでいるのか、何を学べているのかを自覚し、学び方を修正できることは、学習者として自立するために重要な力です。情意面は、関心をもつこと、何らかの価値観や態度など、心の状態や性質に関する目標です。近年では主体的、粘り強さ、誠実さ、自制心、レジリエンス(回復力)、楽観主義などの性質は「非認知能力」と呼ばれ、その育成に注目が集まっています。
タフ(『私たちは子どもに何ができるのか』)は、幼児期の非認知能力の発達が不十分な子どもは、学業や社会に出てからの成功に影響があるとしています。学校では学級の人間関係などの環境を適切に整えることや、教師からの前向きなフィードバックが非認知能力の回復・発達に繋がるとしています。
別の考え方もあります。H.ガードナーの多元的知能(Multiple Intelligences)理論です。脳にはいくつかの領域があり、視覚、言語、運動、情意など分担して機能していると考えられています。方向音痴も一種の障害という話と繋がるかもしれません。ガードナー(2003)は、事故などで脳を損傷した際に失われる脳の働きを調べる中から、およそ8つの機能があることを見出しました。(写真はリンク先から拝借しました)

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具体的な授業設計を考える際に、これらの脳の機能に合わせてカリキュラムや学び方を工夫するといいのではないでしょうか。

■知識基盤社会への移行
子どもたちに今、どんな力を育てていくべきかという議論は世界中で行われています。グローバル化、情報化の流れは世界中で加速しています。21世紀に入り、あらゆる職業で働き方が変わったり、職業そのものがなくなったり、生まれたりしています。このような変化の激しい社会を「知識基盤社会(Knowledge Based Society)」と呼びます。その特徴として次の4点が例示されています。(中央教育審議会,2005)

①知識には国境がなく、グローバル化がいっそう進む
②知識は日進月歩であり、競争と技術革新が絶え間なく生まれる
③知識の進展は旧来のパラダイムに転換を伴うことが多く、幅広い知識と柔
 軟な思考力に基づく判断がいっそう重要になる。
④性別や年齢を問わず参画することが促進される

これらの変化は世界中の人々に関わる変化です。さらに「第4次産業革命(Industry4.0)」といった表現もされています。第1次(工場の機会化)から第4次(人工知能やIoTにより、生産性の増加など)への変化に伴い、学校教育で身につけるべき力を新たに考え直す動きが起きています。

■メーガーの3つの質問
授業づくりと評価の関係をみてみましょう。授業づくりの考え方を端的に表しているのが、メーガーの3つの質問です。R.F.メーガーは授業づくりに重要な考えを、次の3つの問いとして提示しました。

①どこへ行くのか?(Where am I going?)
②たどり着いたことをどうやって知るのか?(How do I know when I get
 there?)
③どうやってそこへ行くのか?(How do I get there?)

これらは、それぞれ目標・評価・方法(指導)に対応します。授業づくりにおいては、これら3つの整合性がとれていることが重要です。つまり、目標に到達しているかどうかがわかる評価の方法を選ぶこと、目標に見合った学習方法を選ぶこと。これらの間にズレがあると、せっかく盛り上がった授業も何のためにやったのかわからなくなります。
目標を考える際にはR・ガニュの学習成果の5分類が参考になります。

■「発問」を極める
「発問」とは、子どもたちの知識を確かめたり、思考を促したりするために行われる教師からの「問いかけ」です。問いかけることで自分の頭で考えるきっかけが生まれます。このきっかけが日常で週間かできることは「生涯学習」の大事な一要素だと思います。優れた発問とは、一つ問うと次から次へと考えが飛び出し、広がっていく中からその時間の本質的な学習内容が見えてくるものです。本の中では、発問を9種類に分けて示されています。(中井俊樹(2015より))授業の目的や展開に応じて使い分けると良いかと思います。

①基礎知識・・・出生率はどのような計算式で求めることができますか?
②比較  ・・・都市と地方では人口減少にどのような違いがありますか?
③動機や原因・・なぜ人口減少が起きているのでしょうか?
④行動  ・・・人口減少に対して国は何をすべきでしょうか?
⑤因果関係・・・都市への若者流入は、人口の増減にどのような影響を与え
        ていますか?
⑥発展  ・・・この授業で私が説明したこと以外に少子化の原因はありま
        せんか?
⑦仮説  ・・・子育て支援が進めば、人口の減少が抑制されますか?
⑧優先順位・・・少子化対策の中で最も有効な方法は何でしょうか。
⑨総括  ・・・A市の少子化対策の事例からどんな教訓がえられますか?

■学習への動機づけとケラーの「ARCSモデル」
学習に向かおうとする姿勢のことを「動機づけ(motivation)」と呼びます。心理学では「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」に区分しています。「外発的動機づけ」は、学習成果に対する賞罰や報酬等の外的な要因によって引き出されるものです。例えば、「テストで100点をとったら新しいゲームソフトを買ってもらえる」がこれに当てはまります。それに対して、「内発的動機づけ」は、学習内容や学習活動そのものから引き出されるものです。内発的動機づけは学習活動そのものから得られる楽しさや達成感によって引き出されるものであるので、持続的な学習が期待できます。この内発的動機づけを伴った学習を実現するために考えられたのが、ケラーの「ARCSモデル」です。動機づけに関する膨大な心理学研究や実践知を統合し、「注意(Attention)」「関連性(Relevance)」「自信(Confidence)」「満足感(Satisfaction)」の4つの段階へと整理しました。(画像はリンク先より拝借させていただきました)

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ARCSそれぞれには3つの下位分類があります。興味がある方は、『学習意欲をデザインする』をお読みください。

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