風向
風向を決めるのが僕の役目。
物見やぐらで風と相談。
「今日は北へ行ってくれるかい?」
僕が言うと、風は頷いた。
北の村では水が不足しているという。
湿った今日の風が山にぶつかってくれれば、
少しは助けになるだろう。
翌日、勢いよく二つの風がやぐらに飛び込んでくる。
「どうしたんだい?」
僕は尋ねる。
どうやら、西に行くか東に行くか、もめているようだ。
「今日は東がいいと思うよ」
そう言うと、西に行きたい風が唇を尖らせる。
僕は微笑む。
「きっと素敵なものが見れるよ」
西に行きたい風は渋々、他の風と一緒に東へ行った。
今日は西の町で、花のお祭りがある。
風が吹いたら花が舞い、とっても綺麗だろう。
僕は東に向かう風を浴びる。
目を閉じると、緑の匂いがした。
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