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 突然の雨。
 僕は庇を見つけて駆け込む。

 彼は優しい。

 よそ者の僕ですら、身体を張って守ってくれるのだから。

 僕らは一緒に空を見上げる。

「やまないね」

 答えはない。

 雨が去った。
 虹が出た。

「綺麗だよ」

 僕は晴天の下に飛び出し、彼に言う。

 そして、気付く。

 彼の命が絶えていることに。

 彼はもう、誰も訪れることのない店の玄関庇。
 廃墟の庇。

 僕は彼に頭を下げ、家路を急ぐ。

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