額縁
画廊に入る。
そこには額縁しかなかった。
僕は額縁を見て回る。
普段は主役ではない彼らが、
こうしてメインで飾られるのは面白い。
だけど、どこか元気がないように見える。
「私たちはやはり主役ではないようです」
画廊の主人らしき男が、苦笑交じりに言った。
「ですが、それが分かっただけでもよいでしょう」
彼は晴れやかに笑う。
「生涯、名脇役に徹する覚悟が決まりました」
彼の姿が消える。
現れたのは威厳のある額縁。
確かにここまで立派だと主役にもなりたくなるだろう。
だが、きっと絵を飾ればもっともっと輝くのだろう。
僕はこの額縁に収まる幸福な絵の姿を夢想する。
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