資料
物語を書いている。
調べたい箇所が出てくる。
僕は資料を手に取る。
探していた内容はすぐ見つかった。
満足して資料を閉じようとすると、
中から騒がしい声が聞こえる。
――僕も見て!
――私も面白いよ!
――このコラムは有益じゃない?
資料の中の情報たちが、きゃあきゃあ、と。
自分も物語に使われたいらしい。
可愛らしいお願いに僕は微笑む。
だけど、資料を閉じた。
全ての声を聞いていたら、物語がぱんぱんになってしまう。
「また今度ね」
僕が言うと、資料からたくさんの不平の声が上がった。
苦笑しつつ資料をひとつ撫でると、
僕はまた物語を生みだす作業に戻る。
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