差出人
差出人のない手紙が街中に配られた。
内容は一人一人違い、
その当人にしか知り得ないことが書かれている。
そして、最後に記されるのは、
この街を救ってくれ、
その一言。
皆気味悪がって、手紙を捨ててしまった。
その十年後。
皆が遺書のように手紙を書き、ばたばたと死んでいく。
その傍らで、僕は必死に過去に手紙を送る。
十年前、街で流行った玩具がある。
それは実は宇宙からの侵略者、
なんて馬鹿げた真実。
それを伝えるために皆必死に過去の自分に手紙を書く。
差出人の名は記せない。
侵略者に見つかれば、差出人が殺されてしまうからだ。
どうか、どうか、気付いておくれ。
僕らは過去が変わることを願い、
今日も差出人のない手紙を送る。
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