馬屋
馬屋の中で何が育った?
馬が怯えて逃げていったこの馬屋。
何もいないはずなのに、何かが蠢いている。
餌箱と、仕切りしかないこの小屋で、いったい何が。
空のはずの餌箱を一つずつ覗いていく。
何もない、次の箱も何もない、次も、次も。
最後の餌箱。
暗いその中に何かが蠢いている。
そういえば、馬屋で生まれる聖人の話があったような。
まさかと苦笑し、覗いてみた。
そこには黒い赤子の形をした何かがいた。
僕を捉えた瞬間、それは泣きだした。
耳を塞ぎたくなるような、あまりにもひずんだ声だった。
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