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鱗粉

 蝶が舞う。
 鱗粉が光る。
 
 僕はその粉に魅せられて、蝶をピンセットでつまんだ。
 
 シャーレの上で蝶を執拗に振る。
 鱗粉が雪のように積もっていく。
 
 はらはら、はらはら、と。
 
 やがて、蝶は消えた。
 鱗粉となって崩れていった。
 
 僕はシャーレに濡れた筆を運ぶ。
 
 正方形の小さなキャンパスに、
 蝶を描く。
 
 白い布地の上で、その触角が蠢いた。

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