湖底
湖底に沈む街なんて、あまりに平凡な美しさ。
だから、湖底に沈めよう。
とても奇妙な美しさを。
僕は死体を沈めた。
それらが腐敗しないように、防腐剤をたっぷり塗って。
撥水加工した密閉の棺桶に、それらを詰めて。
湖底に墓を作った。
人々はその幻想に取り憑かれ、愛しい人を墓に入れた。
いつ来るか分からない干ばつ。
その時まで故人と会えないということを分かっていたのだろうか。
僕は今日も湖底に沈む墓を見守っている。
誰にも会えず、息もできない。
そんな故人の悲鳴を聴きながら、うっとりと悦に浸るのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?