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水黽(あめんぼ)

 水黽はどこから来るのだろう。
 そして、どこへ行くのだろう。
 
 水たまりにぷかぷか。
 近くに川があるわけじゃない。
 
 炎天下の中、水たまりの後。
 そこに水黽はもういない。
 
 僕はじっと観察。
 
 何時間も何日も、
 水たまりの水黽を見つめ続けた。
 
 灼熱のアスファルトの上。
 水分が蒸発していく。
 
「あ」
 
 僕は声を上げた。
 
 まるで水に潜るかのような軽快さで、
 水黽がアスファルトに吸い込まれる。
 
 干上がった水。
 
 水黽が消えていった場所を指で撫でる。
 
 そこにはただただ、
 濡れたアスファルトがあるだけだった。

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