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神隠し

 神隠しにあったのは、僕か世界か。
 
 裸足で白い空間をひたすら歩く。
 
 はじめは世界を探していた。
 だが、今となっては惰性だ。
 
 変化のないそこを、
 腹も減らず、眠りも訪れず、温度も感じず、
 ただただ、歩く。
 
 疲れもしないものだから、延々と歩けてしまう。
 
 僕の周りから、突然世界が消えてしまった。
 世界から僕が消えてしまったのかもしれない。
 
 どちらにせよ、僕はもう二度と世界と再会することはないだろう。
 
 真っ白な空間をぐるりと見渡す。
 
 前も後ろも、左も右も、地面も空も、何もかも、白。
 僕の心も漂白される。
 
 最期は全てがこの白と一つになる。
 
 そこに恐怖はないが、
 少しだけ名残惜しい。
 
 世界を隠した神がいるなら聞いてくれ。
 
 どうかもう一度だけ、
 あの愛しさに触れさせてほしい。

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