見出し画像

変異

 死を望んだ僕は、変異した僕を夢見た。

 五年が過ぎた。

 変異なんて劇的なものはなかった。

 状況は良くならない。
 いつまで経っても僕はみっともない。

 僕は僕を認められない。

 夢見た僕になれなかったら、
 僕は僕を殺そうと思っている。

 いや、思っていた。

 僕はふと気づく。

 あの日の僕が夢見たのは社会的変異。

 それは確かに変わっていない。
 悪くすらなっている。

 だけど、僕は変異した。

 だってそうだろう?

 今、こんなにも死にたくないのだから。

 これを変異と言わずして、なんという。

 ああ、かつての僕よ。
 君は納得いかないかもしれない。

 だけど、どうか見逃しておくれ。

 まだもう少し、未来に希望を見てみたいんだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?