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ドイツ 手作りケーキに関する緩やかな考察 後編
前編はこちらから。
Dr.Oetker Welt ドクター・オッカーの世界と呼ばれる本社は、今も創業当時のままビーレフェルトの中心地にあり、会社見学も可能だ。
工場は国内に何箇所もあり、流通を考慮すれば高速道路アウトバーン近くが有利だと思うが、本社近くにも工場を残している。
様々な分野に参入し積極的に推し進めるイメージだが、本社や工場をビーレフェルトに残すところは郷土愛を強く感じられる。
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入口には、創業から現在までの社長や一族の写真が並ぶ。
会社見学では、会社の歴史と商品紹介、世界の流通網等を2時間ほどで説明して下さる。
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多国籍企業であるオッカー社は、時にはその国で馴染みある名前に変えて販売を行う。
例えばイタリアでは、Cameo。
こういった機転も、各国の綿密な調査や企業努力、そして商才を感じた。
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ロゴマークの変遷。
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商品化までには、多くの実験を重ねる。
焼き時間に多少の差があっても、どんなオーブンを使っても美味しく焼けるよう、少しずつ配合や焼き時間を変え、最高の商品を作り出す。
それは、プリンやゼリーなどの商品も同様だ。
失敗がないから、誰もが楽しく作れる魔法のよう。
現在、40種を超えるケーキキットが販売されているという。
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また、試食も何百回も繰り返し、評価してもらうそうだ。
見学者の一人が、僕も試食要員として雇って欲しいと冗談を言い、みんなを笑わせた。
解説担当の方は、いつでも応募してくださいと返答し、更に笑いを誘う。
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会社見学の最後には、プリンやゼリー、焼きたてピザ、コーンフレークなどの試食が用意されている。
記事前編の冷凍ホールケーキも、オッカー社傘下のCoppenrath&Wieseというブランドだ。
冷凍ピザは、冷凍バゲット等を含め70種類もの商品がある。
国内には2か所のピザ工場があり、1日230万枚が製造されているという。
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また、本社では料理教室が開催され、見学の途中にその教室前も通った。
私はパートナーの母と一緒に料理やケーキを作るが、時々やりかたが違っている。
私が手間をかけて作るものを、彼女はとても簡単な方法で作り出すのだが、その時はオッカー社の商品を使っている。
さすがオッカー!と私は感嘆する。
この記事を書くために、マフィン用キットを試しに焼いてみたが、追加材料も少なく手順も簡単だった。
何もない普通の日に私が手作りスイーツを持参したので、会社のみんなが喜んでくれた。
どんなに簡単でも、手作りは嬉しいものなのだ。
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ビーレフェルトには、芸術を愛するオッカー一族によりカルチャーホールが建設されており、音響が良い事で知られているそうだ。
Rudolf-Oetcker Halleと名付けられたホールは、創業者アウグスト・オッカーの孫の名前。
市民の憩いの公園のすぐ隣だ。
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代々オッカー一族のみで同族経営されてきたが、今は初めて家族以外の方が社長に就任している。
Albert Christmann アルベルト・クリストマンだ。
蛇足だが、オッカーの一族の中には、誘拐に遭ったかたもいらっしゃる。
その際に、ひどい怪我を負われ、今も後遺症に悩まされていると聞いている。
ドイツのトップ企業、オッカー社。
その会社の株は、たった7人の家族が所有している。
富裕層ランキングのトップ常連であり、その資産が狙われる事も容易に想像できる。
オッカーグループの利益は、グループ一族の意思により未公表だが、オッカー一族の資産は、推定75億ユーロにもなるそうだ。
芸術を愛でる一族は、社会貢献にも積極的に参加して来たが、スポーツ団体のスポンサーにはならなかった。
地元サッカーチーム、アルミニア・ビーレフェルト。
チームはオッカー社に対し、スポンサー依頼を何度もしたそうだ。
しかし、このチームはある選手が八百長に関わり、チーム自体がリーグ降格という重い罰を受けた過去がある。
それだけが理由かどうかは不明だが、今までの経営者は、スポンサー契約について一度も首を縦に振らなかったそうだ。
しかし、クリストマン氏が経営者になってからはスポンサーとなり、ホームスタジアムにオッカーファミリーゾーンが設けられた。
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以上の情報は、私が調べた事、パートナーから聞いた話、そして会社見学で得た知識だ。
コンパクトに纏められない事が悔しいが、全ての情報を残しておきたい。
私が緩やかに考察した、ドイツで手作りケーキが好まれる理由は以下3つ。
①発明
オッカー氏がドイツ人であり、ドイツでベーキングパウダーを発明し、起業したこと。
この事は、自国の発明と商品であるから、より受け入れやすい環境であったと推測できる。
一人の薬剤師、かつ発明家のお陰で、世界中のたくさんの人が簡単にケーキを作れるようになった。
私もその恩恵を受けている一人だ。
②企業戦略
オッカー社の企業戦略により、手作りケーキが週末のイベントに加えられたこと。
一部から批判を受けつつも、オッカー社の思惑通りに、ベーキングパウダーとその関連商品は売れ続けた。
日本では、バレンタインにチョコをプレゼントする事が定着しているが、あれも元々は単なる企業戦略だった現象と似ている気がする。
今でも『日曜日には手作りケーキ』というオッカー社のCMイメージが、ドイツの年配の方々には根強く残っている。
日曜日は家族と一緒に過ごす習慣の土台があることも、もちろん付け加えなければならない。
③企業努力
オッカー社が、今も変わらずに企業努力をしていること。
どんなにCMをしても、良い物でなければ商品は売れない。
販売される商品のクオリティーが高く、誰でも簡単にスイーツが作れるという事は、大きな理由の一つだ。
誕生日のおもてなしの習慣にも、このキットはぴったり。
混ぜて焼くだけのマフィンでも、私の同僚が喜んでくれたのは実証済だ。
手作りケーキは、手紙をわざわざ書く手間のように、その人を思う時間と労力のプレゼントとも言える。
料理好きな人は、オッカー社のキットを使わずに作る人も多いだろう。
しかし、誰もが子供の頃、手作りスイーツを作る楽しさを、オッカー社の商品から学んでいるのではないだろうか。
このように、オッカー氏、並びにオッカー一族の『発明』と『企業戦略』と『企業努力』は、他に類を見ないほどの相乗効果を生み出した。
それがドイツに多大な影響を与え、手作りケーキが好まれるようになったのではないか。
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見学の最後に、一つ質問をしてみた。
アジア圏では韓国進出しているが、何故日本には進出していないのか疑問だったからだ。
日本市場はとても興味深い、但しまだ進出には至っていないと、やんわりとした回答しか頂けなかった。
私は、イタリアではCameoの名で販売されている事を思い出し、日本ではどのような名前で売り出すのだろうかと、気の早い妄想を楽しんだ。
オッカー社の代名詞、プリン。
この巨大プリンは、本社玄関近くに置いてあるが、単なるデコレーションではない。
マグカップを置くだけで、温かいカスタード状のプリンを作る、遊び心のあるプリン自動製造機なのだ。
このプリンは、オッカー社そのもの。
可愛らしい見た目の中に、目に見えない機械が入っている。
オッカー社の美味しい商品も、私達の目には見えない企業努力から生み出されたものだ。
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会社見学の最後には、お菓子キットや、フレークなどのお土産をくださった。
解説の方の丁寧な案内と温かい雰囲気に、オッカー社のファンにならずにはいられない。
こうして記事に残しているのだから、私はもうすっかりファンである。
日本進出していない企業だからこそ、是非書き残しておきたかった。
パートナーには感謝している。
私の疑問に対して、面白いと言って一緒にその答えを探してくれる。
この記事を残せたのも、パートナーのお陰だ。
最後に。
記事中のケーキの写真は、パートナーの母が、甥や姪のリクエストに応えて作ったものだ。
いつも、今日はこんなケーキを焼いたのよ!と写真を送ってくれる。
ハリネズミのケーキは、パートナーも幼い頃に大好きだったそうだ。
ハリネズミの針はポッキー。
ちなみにポッキーはドイツで『Mikado』の名前で販売されている。
このような手作りならではのケーキが、私は大好きだ。
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ドイツの誕生日祝いについてはこちら。
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