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オランダ デン・ハーグ①王子の日のパレード
オランダの、9月3週目の火曜日。
この日は国の祝日ではないそうだが、Prinsjesdag(王子の日)と呼ばれており、非常に大切な日だそうだ。
この日には、デン・ハーグ市内で王室のパレードが行われ、金の馬車に乗った国王にお目にかかれるという華やかなイベントがある。
そのため、デン・ハーグ市内の学校は、お休みになるそうだ。
さて、このパレードは、一体どんなパレードなのだろう?
毎年、テレビに映し出される華やかな様子をぼんやり見ていたものの、実際にパレードを見に行く時まで、恥ずかしながらその意味を深く知ることはなかった。
調べてみてようやく、このパレードがこの街で行われる意味と、金の馬車と国王がそこにいる理由が分かった。
オランダの首都はアムステルダムで、経済の中心地もまた、アムステルダムだ。
しかし、政治機能の所在地はデン・ハーグ。
ビネンホフと呼ばれる一帯は、国会議事堂等が並ぶ政治の中心地である。
この日は元々、プリンスWilhelm V. von Oranienのお誕生日を祝う行事で、3月8日に設定されていたらしい。
それが、今は議会開会式の日を指すようになったそうだ。
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この日のパレードは、議会開会式の前の演説のために、国王がノールドアインデ宮殿から、ビネンホフの騎士の間に行くためのものだという。
議会は、翌年の国家予算、来年度の政策の目標、財政配分等も発表されるため、大変注目されるそうだ。
日本の国会開会式でも、国会議事堂にて、天皇陛下がおことばを述べられる事と同じだ。
この儀式の初期には、この日取りは11月の第1月曜日だったそうだが、後に10月の第3月曜日になった。
しかし、それらのいずれも、時期が遅過ぎて、1月1日からの予算編成に充分な時間が確保できなかったため、1848年からは、9月の第3月曜日に前倒しされたそうだ。
しかし、またもや問題が起きる。
多くの国会議員にとって、ハーグへの移動時間は長く、この日に間に合うように本会議場にいるためには、日曜日のうちに自宅を出なければならなかった。
これに対し、特にキリスト教政党の議員は反対したそうだ。
何故なら、日曜日は、静かに過ごす日とされているからだ。
ついに1887年、王子の日は9月の第3火曜日に決定した。
この日、オランダ国王ウィレム=アレクサンダーは、ビネンホフにある騎士の間(Ridderzaal)で、玉座からスピーチを読み上げ、新年度を開会する。
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スピーチの後、大蔵大臣はスーツケースを担いで下院に入るそうだが、このスーツケースは1947年以来の伝統で、数日前からマスコミの好奇心をかき立てるのだという。
このスーツケースには、国家予算と『Miljoenennota』が入っているからだ。
『Miljoenennota』 とは予算声明のようだが、来年度の内閣の最も重要な計画や決定事項が記載されており、これらの計画にどれだけの費用がかかるかが示されている。
また、オランダの財政・経済状況や、今後予想される展開についても記載されている。
つまり『Miljoenennota』は、国家予算の説明書のような位置付けのようだ。
国家予算も注目されるが、王室ファンのみならず、国民のみなさんにとっては、金の馬車に乗った国王、王女に会える機会でもある。
パレード沿いには、何千人もの市民が集まるという。
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今年は、18歳になったアレクシア王女が初参加される事が注目されていたそうだ。
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オランダの国王の誕生日を祝う、4月27日の祝日は、国はオランダのナショナルカラーのオレンジ色で溢れかえるそうだ。
オランダ王室は、とても愛される存在だと気付かされる。
このような国王への愛情は、過去から続いているものらしい。
1898年9月6日の戴冠式で、アムステルダム市民からの贈り物として、黄金の馬車(Gouden koets)を受け取ったヴィルヘルミナ女王。
1903年、ヴィルヘルミナ女王は初めて黄金の馬車を使って、ビネンホフに移動したそうだ。この事が、金の馬車が王子の日のシンボルとなったきっかけと言われている。
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しかし、この金の馬車に描かれた絵は、近年では奴隷制や人種差別問題の批判を受けてきた。
2016年から修復期間に入った馬車は、2020年に修復が終わった。
その間は、ガラスの馬車が使われてきたそうだが、こちらもとても立派な馬車である。
2020年、2021年はコロナのためにパレードは行われず、2022年1月に、国王はこの金の馬車の使用を休止すると発表した。
そのため、ガラスの馬車が使われたようだ。
また今年7月には、国王は奴隷制を人道的な罪だったとし、謝罪を行なっている。
パレードが始まると、遠くから音楽が聴こえてくる。
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このような行事を目にすると、やはり日本の皇室を思い出さずにはいられない。
日本の皇室とオランダ王室は、親密な関係だと聞いた事がある。
私はまだ一度も天皇陛下にお目にかかった事はないのだが、一般参賀などには大勢の皇族ファンの方々が集まっているのを、ニュースで目にする。
ここでも同じく、王室ファン、そして多くの市民の方々が集まっていた。
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市民から贈られた立派な金の馬車。
それに乗る事を退け、国王はこう言ったそうだ。
「われわれは過去を書き換えることはできないが、共に受け入れる努力をすることはできる。これは、植民地時代の歴史にも言える。
黄金の馬車は、オランダの準備が整うまで使用されない。
そして、今はまだその時ではない。
日常的に差別の痛みを感じる人々がオランダにいる限り、過去は現在に影を落とす」
オランダ大航海時代。
オランダ黄金時代。
17世紀は、オランダが世界で最も大きな経済大国でもあった。
そのかつての栄光と軌跡を、間違いであったと謝罪する事の意味を、改めて深く考える。
金の馬車に乗る国王は、それは絵になる事だろう。
ここで、金の馬車の代わりが、ガラスの馬車と名付けられている事に注意を向けてみる。
ガラスとは透明性を表す言葉でもある。
王室は、奴隷制を思い起こさせる金の馬車ではなく、国民にとって透明な政治や体制を謳うために、あえてガラスの馬車と名付けたのだろうか。
王子の日のパレードは、金の馬車でも、ガラスの馬車でも構わない。
いつか、差別を感じる人々が、オランダだけでなく、世界の全ての場所で存在しなくなる日が来る事を祈りながら、華やかなパレードを見送った。
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