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ぼくの好きな先生 ファイナル

おいでませ。玻璃です。

胡散臭いおじさんはあれ以来見かけなくなった。

その分、父も母も出かける事が多くなってきたようだ。
何が起きているのかわからないながら、私はいつも通りの生活を送っていた。

学校では仲の良い友達に囲まれて、毎日楽しんでいたと思う。

その頃、学校では受験に向けて面接の練習が行われていた。
出席番号順にひとりずつ職員室に行き、ショージ先生と面接の練習だ。

当然自習となった教室はみんな自由奔放。本当なら順番に職員室の前に行って自分の順番を待たなければならない。
だが、自由になった私たちは途中から遊びに夢中になる人、受験勉強する人でどこまで呼ばれているのかわからなくなった。

ガラッ!

「お前ら、何しよるんじゃ!順番に来いって言うたやろうが!」

ジョージ先生が怒鳴って入って来た。

「出席番号で止まったやつの次から最後のやつまで職員室に来い!」

私の出席番号は後ろの方。
もちろん職員室に呼び出しだ。

職員室前の廊下に並べられた私たち。

「お前ら、なかなか進まんなとか気がつく奴はおらんのか!どいつもこいつも無責任なやつ。連帯責任じゃ!」

と言ってひとりずつ

ピシッ
ピシッ
ピシッ
ピシッ

ビンタをくらう。

それを帰って親に話しても

「それは仕方ないかもねぇ」

はい、終了。
今だったら大変なことになる案件だ。

そんなジョージ先生。
この受験シーズンにとった行動とは。
体育教師であるジョージ先生はあまり勉強が得意ではなさそうな雰囲気だが、放課後や休み時間に数学の先生や国語、理科の先生にお願いして、勉強を教えてもらっていたようだ。

ホームルームの時間は受験勉強タイムになり、みんなのつまづいているところをわかりやすく教えていた。
金八先生の観過ぎではないかと思いつつ、ショージ先生の一生懸命さに皆、ビンタのことは許していた。

そして中学生生活、最後の学年別合唱コンクールの日がやってきた。
今までは音楽の教科書に載っている曲から選ぶのだが、卒業前ということで、今回は特別に今流行っている曲でもOKということになった。

「何の曲にする?楽しみやねぇ。」とみんなでわくわく話していたのだが。

「いくらなんの曲でもええと言っても、歌謡曲がええとは聞いとらん。
うちのクラスは教科書の別紙の歌の本から選べ。」

「えーーー!」

結局私たちは“赤い花 白い花”を歌うことになった。
どこのクラスがなんの曲を歌うかはそれぞれ秘密で、コンクール当日まで他のクラスの曲がわからない。

本番になってみると、各クラス歌うのはユーミンやサザン、大沢誉志幸などの流行歌を歌っていて、学校指定の歌本の中から歌ったのはうちのクラスだけだった。

私たちは絶望したようにクラスに帰った。

その後、ショージ先生が入ってきて、

「すまん!みんなも流行している歌を歌いたかっただろうに…。卒業前の思い出を台無しにしてすまん!この通り!」

と言って腰を折って深々と頭を下げた。

顔を上げた先生の目には涙が溢れ、鼻水をすすっている。
こんな時の先生の顔は間寛平さんに似ているなぁとつくづく思う。

うーん、これは許すしかないやろ。

結局、私たちは反対に先生を慰めるハメになった。

そんなショージ先生が今でもみんな大好きだ。次回の同窓会が楽しみでならない。

そして…我が家の経済状態はおそらく悪化していて、このような楽しい学校生活を送る私の背後に黒い影がヒタヒタと歩み寄ってきているのだった。

ではまたお会いしましょう。



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