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VOCALOID5に見え隠れするヤマハの狙いと思い


4年振りのメジャーアップデート……!


7月12日。VOCALOID5が発売された。
プレスリリースや公式サイトを見る限り、このメジャーアップデートは完璧に思える。
そして、このソフトの狙いもヤマハの思いも見え隠れする……。


4年の間に何が起きたか

すっかりEDMは生活の一部になり、企業のPR動画やCM等で聴かない日がなくなった。そして音楽制作の環境の変化として、PCのみならず、タブレットやスマートフォンで曲を作る人も増えてきた。


何が「完璧」か

先ずは下位互換。VOCALOID3とVOCALOID4のボイスバンク(音源ライブラリ)が使用できる点。これは今までVOCALOID3以降の環境で曲を作ってきた人にとっては何よりも有難い。
だが、それ以上にトピックなのはVST/AUに対応ということだ。

コンピュータでの曲作りには音源が必要になる。音源は様々あるが、VOCALOIDのように人間らしく自然に(あまり手塩に掛けなくても)歌ってもらえる音源は少ない。

今までのボカロ曲は

・あらかじめ演奏の音源を作り「VOCALOID Editor」にて歌詞を打ち込む。

・Rewire機能を使い同期させる。

・「VOCALOID Editor for Cubase」という別売りのソフトを使い、DAWのCubaseで打ち込む。

といった方法で作られていた。



Rewire機能にてDAWとVOCALOIDを同期させて作ったデモ音源等はこちらの記事から。


VST/AU対応により何が変わるか

今まで販売されてきた「VOCALOID Editor for Cubase」はVOCALOIDをリアルタイムで打ち込みも出来る。言うなれば、VOCALOIDを自在に編集出来る音源に変えるソフトだ。
つまり、音源をピアノから初音ミクに変えることもヴォーカルの四分音符を八分音符に変更することもこのソフトがあれば容易に出来る。
しかし、「VOCALOID Editor for Cubase」は別売りのソフト。さらには使えるDAWもCubaseに限られる。

そして今回のアップデートである。
VOCALOID5ではこれまで「VOCALOID Editor for Cubase」を使ってしか出来なかった上に書いたような、音源をピアノから初音ミクへ、そして四分音符を八分音符に変更するといったことが全てのDAWで出来る。

事件だ。
こんなことも出来る。そう。VOCALOID5ならね。
といった具合だ。

これを見て、「今まで音源をwav化してVOCALOID Editorで打ち込んだ時間はなんだったんだよ」とか「もっと早くそれをやれよ」とかの声を草葉の陰からボカロPが発しているのが眼に浮かぶ。
さらに、VOCALOID5はMIDIに入力によるリアルタイムレコーディングも出来る。それによって、MIDIキーボード等MIDI入力に対応した機器を弾けば、抑揚を付けて簡単にボカロパートが入力出来るのだ。


見え隠れする「狙い」

今や音楽制作の標準となったVST/AU対応することにより、VOCALOIDを「コンピュータで歌わせるソフトの標準」になることを見据えたアップデートにしか思えない。
EDMの人気は根強い。そして、VOCALOID5には「ボイスバンク」があり、ボイスバンクはEDMのドロップ(サビ)前のフレーズを作るニーズに対応したと思われる。
さらには、ボイスバンクをドラッグ&ドロップすれば、歌入りの曲が(簡単に?)作れるのだ。

本格的にそして拘りたい人に向けては、VOCALOID5のプレミア盤に「CYBER DIVA II 」と「CYBER SONGMAN II」のボイスバンクが付いてくる。

「II」ではない「I」のデモは以下から。

これらのデモを聴くに、かなりEDM等に使えそうな音である。


真の狙い

それは先程述べたように標準化そして、グローバル化ではないか。VOCALOID5がダウンロードのみで今のところ販売されているのも、その狙いの為と思われる。
今や、音楽に国境もタイムラグもない。アメリカのビルボードチャートで韓国のアーティストが韓国語で歌い、アルバムが1位になる時代である。さらにタブレットやスマートフォンで音楽を作ってSNSにアップするのが当たり前の時代だ。
VOCALOIDも始めは一部のオタク的な文化であったが、今やニコニコ動画でボカロ曲をアップしていたアーティストが自分で歌ってオリコン1位を取り、カラオケにはボカロ曲が溢れ、富田勲も初音ミクを使った。オーケストラとの共演、そして3D照射によるライヴとすっかりVOCALOIDは日本でメジャーな文化となった。

そして、次は世界だ。

一晩で何億も稼ぐアーティストの曲にVOCALOIDの歌声があったら、そして、VOCALOIDがこれからの音楽の標準となったら胸が熱くなる出来事ではないか。
今回のVOCALOID5によりそんな時代がすぐそこまで来ていると思える。




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