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せっかく

ねぇ,いいの せっかく来てくれたのに
せっかくの制服にせっかくの友達
せっかくうまれてきたのだからと
せっかく生きるのか
誰もかれも勿体ないような気がしているのだ
時間が,私が消費した酸素が,すり減った消しゴムが
通り過ぎていくだけのもの達の前で
真夜中の救急車のように
救って救われて
でも,僕は眠ったままでいい

少しばかりのライターの火でぼぅわと
焦げあがる父の煙草が揺れていた
ほんの僅か肺の細かな細胞達に取り込まれ
また殆どが霞になって漏れていく
鼻に残った分だけは,きっと僕のものだった

ごめんなさい,まだ,身体が優れないみたいなの
せっかくの麦茶を飲み干して同級生は行くだろう
せっかくの汗をかきながら
勿体ないとはこれっぽっちも思わないままで
ペダルの音をキャリキャリと鳴らしながら

せっかくだけれど会えないままで
いつものようにカーテンを開ける
知らない背中が小さくなって
せっかくだからと手を振っている
知らない背中が見えなくなるまで
そのまま僕は手を振っている

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