騒めき

生きようとする前から、僕らは生きている。
何かにせっせと生かされているけれど、その手は見えない。
死のうとする前から、とっくに死んでいっている。
小さな呼吸ひとつままならないで、それが愛おしいと思う。

どうということもない、群れた命の洪水の
その只中で、見分けもつかぬ微かな光なので
今この瞬間に消えようとも、それでも
世界の真ん中からはじっこまで、何ひとつ変わりはしないけれど
消える刹那に確かに聞こえる、嗚咽やら慟哭やらは
この、暴れる大流で途絶えることのない、騒めき。

生に意味がなくてもそれが、ドミノ倒しのように
見えぬほど遠くまで、前と後ろに控えている。
どうということもない命の、取り止めもない幸せの彼方で
どうか、君がスキップをしながら
明日を、死を
軽やかに踏み潰して、どこか、
歌すら届かない場所へ
振り向きもせずに消えていってくれますように。

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