指輪

全身全霊込めて作ったって君の
手作りクッキーに入ってる
チョコチップはやけにほろ苦い。
そろそろ危うい、
なんて思っているのは僕だけですか?
いや、君は知らんぷりだねいつも。

愛なんてかたちの無いものに縋るのは
僕ら人間の専売特許だけど、
少しは目に見えるものに
変えときゃ良かったなんて
後悔は目に見える。例えばそう、指輪とか。
Facebookで見つけた、
友達の子供の写真を
食い入るように見つめてる君に
責任を感じ無いわけじゃないけど、
嫌いなわけじゃないけど、

そうだね、好きでもないんだね多分。

何となく隣にいて心地がいいもんだから、
流される枯葉みたいに寄り添っていたんだけど、
僕らはどこまでも一人と一人でした。
もう春が来ました。
花も咲きました、枯葉を忘れたみたいに。
そして散った花で埋め尽くされた川で、
枯葉は沈んでいくのです。

形のないもので繋がっていたけど、
形にする勇気は持てないまま。
僕らに次の夏は来ないから、
週末、少し遅い花見に行こうか。
久しぶりに手でも繋ごうか。
キスでもしようか。
涙を流そうか。最後のために。

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