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travelereel
祝祭
さあ鐘が鳴る。花が咲く。
君がために世界は今朝も生まれいづる。
街には聖歌が満ちる。
月と星と太陽が共に光る。
思わず君は歌い出す。
誰も覚えていない君だけの歌が流れ出す。
君は足跡をつける。少しだけ土が舞って
それからまた風が運んでいく。
止まない喝采に君は少しだけ手を上げて
向かい風を選んで拳を握る
次第に街は遠ざかり、耳には何一つ届かなくなる
瞼の裏でこだまする君だけの歌を頼りに進む
目を瞑り、歯を食いしばり、拳を一層固くする
視えずともそんな君が隣に居ると思う
名前も知らない音律と君の歌が
風の向こうから漏れてくる
応えるように、鐘を鳴らす。
祝福されない旅路の中で君が
ここを見失わぬように。
風の向こうで私は君の祝祭を待っている。
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