咲けよ、はなまる
学校の机の、狭い引き出しの中に、
丸めて押し込んだのは、自意識でした。
同じ髪色を見る度に、
掻きむしりたくなるほど傷つくのは、
あなたがあんまり綺麗に笑うからでした。
この冬が終われば、待望の波に押し流されて
テスト前の憂鬱も、休み時間の冴えた頭も、
教科書の隅の落書きみたいに、
誰からも、忘れられてしまうのでしょうか。
ねぇ、はなまる下さい。
ただのまるじゃなくて。
ありふれた正解なんて、誰にでも分かるから、
あなたの正義と重なりたい。
ねぇ、はなまる下さい。
ただのまるはゼロに見えて
全てなくなりそうで怖いから、
あなたの呼吸と同期したい。
99点と100点のあいだの、1点になりたい。
同じ1点のくせに惜しまれたい。
僕が、死んで、消えた、後は、
あなたの毎日が99点のままで、
止まってしまったらいいのになんて。
あなたといた、ここが僕の春ならば
もう二度と戻れない、あの時間が春ならば
この冬が明けても、
夜明け前の窓を開けても、
まだ、風は吹かないで。
むせかえるような春を、僕に教えないで。
僕に、はなまるが咲くまで。
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