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反芻


そして風は僕らを置いていく
消し損ねたインクの滲みがじわじわと
足音を消して忍び寄るよう
目が覚めるたび知覚出来ないはずの死が
確かな痛みになっていく
こんなにも満たされているのに脳は飢えている
ぬるいコーヒーがいつまでも朝をやめてくれない
焼け焦げた網膜を慰めるように
意味もなくブルーライトを浴びる習慣

誰が言ったのかも知らないけれど
この世界の半分は幸福で出来ているのだという
二度と分離出来ぬほど溶け合っていたはずなのに
僕らの肺胞はいつも不幸だけを選択して
丁寧に取り込んでいるから
ため息はもはや嘔吐に等しい、そしてようやく
夜が来ている。猫も鳴くだろう。

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