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はだかのケモノ

何もかも面倒くさくなったはずの朝なのに、燃えるゴミの日を忘れずに、律儀に守れるような人生は、気の抜けた夏のコーラみたいで愛おしい
何かを求めるわけでもないのに街に出ると、周りのみんなが何か、キラキラと輝くものを持っているように見えて、それは余計に、自分の求めるものを隠してしまう、影を作るように、風に攫われるように
いっそのこともう猫にでもなってしまおうかと、ダンボール箱に毛布を敷いて、拾ってください、と一言。言葉を発しただけなのに雪はこんなに近くまで積もって、毛皮を持たない僕らはこたつの中で伸ばした、足の先に人生の幸福が全部、詰まっているんだと知り、誰にも聞こえないように、生きててよかった、とつぶやく。だけの、少し頭の小さなケモノだった。

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