シェア
雨後 晴太郎
2019年11月26日 11:21
僕らはみんな檸檬だった。 固く、刺々しいほど鮮やかな色を抱えながらなにか物足りず、なにか不安で傷がつくたびに、弾けるように香るあの、残酷な日々を思い出す。 あの、保健室の彼女も野球部のエースも、寡黙な彼もきっと、私達と同じ世界に生きていた誰かだった。僕も、その只中にいた、一つの檸檬だった 日々が遠く離れていくほどゆっくり溶ける角砂糖のように嫌な思い出ばかりを忘れて