【超短小説】年雄と不倫
"ここ数年、定期的に不倫のニュースを見るなあ”と年雄は思いながらため息をついた。
正直、まったく興味がない。・・・いや、興味がない方がいいと思っている。思っているが、記事は読んでしまう。
"はぁ"・・・ため息が出る。
年雄がなぜ興味を持たないようにしているかというと、昔、幼なじみのマーボーの不倫がバレた時、仕方なく年雄が、奥さんとマーボーの間に入った事があるからだ。
仕方なくと言ったが、本当は軽い気持ち、興味本位だったと振り返って思う。
激怒する奥さんに「まぁまぁ」と言い、マーボーに「ちゃんと謝れ!」と言った。
そのあと、「こいつも反省してるんだから、許してあげてよ」なんて言った。
適当で他人事のようなセリフだった。
奥さんはさらに怒りのボルテージを上げ「てめぇは関係ねーんだから黙ってろ!」と言って年雄が買っていった缶コーヒーを握りしめ、年雄のコメカミを殴り付けた。
年雄は思わず「おっしゃる通りです!」と敬語になった。
そのあと奥さんは、部屋にある物全部を年雄とマーボーに投げつけた。
年雄とマーボーは部屋を逃げ出した。
部屋を逃げ出したマーボーは年雄に「お前に頼むんじゃなかったよ!」と言ってきたので、年雄はマーボーのコメカミを殴って帰った。
その後、時間はかかったが、マーボーの謝罪は受け入れられ、今に至る。
人の不倫に、興味本位で首を突っ込んでもろくな事がないと思った。
ていうか、人の不倫なんて、興味本位以外ないかも知れない。
だから年雄は興味がない方がいいと思う。
思うが、記事を読み、色んな感情を抱き、思考を巡らせる。
そして"また興味を持ってしまった"とため息をつく。
浜本年雄40歳。
独身。
俺はいったい何をやってるんだか。
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