【超短小説】年雄と歩こう会

朝、年雄が会社に向かう途中、小学生の団体を見かけた。
先生の後ろを2列にならんで、楽しそうに歩いている。
遠足だろうか?

年雄はそれを見て、"歩こう会"を思い出した。

歩こう会とは、年雄が小学5年生の時、担任の先生が作った会だ。

小学校から、20キロ先の湖までみんなで歩いて行こうと言い出した。

友達と助け合いながら、みんなで目的を達成する喜びを味わおう!なんて言っていた。

学校の行事ではなく、担任の先生の個人的なイベントだったので、参加は自由だった。

年雄は興味本位で参加した。

学校が休みの日に、朝5時30分に小学校に集合。

参加した生徒は、10人程度。クラスの3分の1以下だった。

友達と助け合いながら・・・。思っていたより、友達は少ないと思った。

陽が登る前に出発。

途中、陽が登る瞬間は、綺麗だなと思った事は覚えている。

だが、そこから先は、ただ淡々と歩いた。友達と会話した記憶すらない。ただ淡々と歩いて目的地に着いた。

そんな記憶だ。

友達と助け合った記憶もなければ、目的地に着いた達成感もない。

次の日、学校に行っても話題にすらならなかった。

"歩こう会"は個人競技だった。

浜本年雄40歳。

久しぶりに20キロ歩いてみようかな。

1人だし。

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