【超短小説】年雄とケバブ

年雄は昼過ぎに、友達と待ち合わせをしていた。

年雄が待ち合わせ場所に着いたのは、待ち合わせ時間の30分前。

遅めのお昼ご飯でも食べて、時間を潰す事にした。

駅前をぶらぶらしながら、お店を選ぶ。

牛丼か・・・天丼か・・・そばもいいな。

でもせっかく普段来る事のない駅に来ているから、この駅ならではの物にするか。

年雄は悩みながらぶらぶらを続ける。

年雄はケバブ屋さんの前で足を止めた。

"ケバブか"年雄は思った。

今までにケバブを食べたのは、一回くらい。

これはいい機会だ。

年雄はケバブに決めた。

お店では食べられないので、テイクアウト。

年雄はアツアツのケバブを持って近くの公園に向かった。

ベンチに腰掛け、ケバブにかぶりつこうとした時、年雄の鼻先にポツリと水滴が落ちた。

ん?

年雄は空を見上げた。

さっきまでの晴天がウソのように、真っ黒い雲に覆われていた。

"やばい!早く食べなくては!"

年雄はケバブにかぶりついた。

水滴はポツリポツリからポツポツをリズムを早め、一瞬でザザザーっと豪雨に変わった。

屋根のある所に逃げるか?

ケバブを食べ切るか?

どうする?!

年雄は・・・

ケバブに噛みつき、食べ切る事にした。

豪雨の中でのケバブ。

ビチョビチョになったケバブ。

味も何もあったもんじゃない。

食べ終わる頃、年雄は豪雨の中、笑っていた。

悲しくて。

浜本年雄40歳。

公園のベンチでビチョビチョのケバブを必死に食べるおじさんを、通りかかった子供達が見たら怖かっただろうな。

ごめんちゃい。

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