マガジンのカバー画像

【小説】MONKEY A GO-GO!

18
運営しているクリエイター

#フィクション小説

【第十二話】涙の事故報告書。

【第十二話】涙の事故報告書。

突然のギックリ腰に襲われ、介護士にもかかわらず要介護状態を体験した僕はあれから1週間後の今日、ようやく職場復帰していた。

なった者のみぞ知るあの地獄の痛みから解放された喜び。に、満ち溢れているはずの僕の心はドンヨリと曇っていた。
ウラハラにって言うのはこういう時の為にあるんだな。

何であんな事言っちゃったんだろう。
そう、あの時─。

【第十話】明けない夜勤。

【第十話】明けない夜勤。

「二人ともオッツカレさま〜!夜勤どうだった?何ごともなく?」

「ウィっす。全然余裕っす。何ごともなくっす。」

平然と言ってのけたおサルさんに僕は出来るだけの呪いをこめた視線を向ける。

あぁもうダメだ。クタクタだ。怒る元気がない。

「はい…夜間、特変なしです」

絞り出すようにそう言うと、何かを察した施設長は

「そ、そっかそっか…。良かった。じ、じゃまたよろしく〜」と逃げるように事務所を出

もっとみる
【第九話】NIGHT OF THE LIVING MONKEY

【第九話】NIGHT OF THE LIVING MONKEY

「明日の朝は全国的に強い冷え込みとなるでしょう。それではまた明日のこの時間に。」

こっちはこれからおサルさんと夜勤だというのに、気象予報士は勝手に一日をシメている。

テレビを消して家を出ると、その役目を終えかけた太陽が反対の空に浮かぶ細い雲をオレンジ色に染めていた。

【第六話】おサルさん介護士、避難訓練で大炎上の巻

【第六話】おサルさん介護士、避難訓練で大炎上の巻

「おはざぁーす、あ痛テテテ…」

「何だよ若者が朝から腰押さえちゃって」
僕の顔をみるなり、あっという間に僕の背中に飛び乗ってくるおサルさん。

「あ、先輩おはようございます。イテテテ、ちょっといったん背中から降りてもらっていいですか」

何だよノリ悪ぃな、
と僕の背中からひょいとテーブルに飛び移る。
腰をおさえて座る僕のちょうど目の前にサルさんの股間がぶらさがっている。

【第四話】介護士、禁断の恋に落ち。

【第四話】介護士、禁断の恋に落ち。

「ちょちょちょっと!カモちゃん!
何やってんの!あ〜あビショビショだよ〜」

「あ、、すみません、、植木鉢だと思っちゃって」
「どしたの?今日は朝から何だかボーッとしてるけど、体調でも悪い?」
頭から水をかけられびしょ濡れになった施設長が心配そうに聞いてくる。
「すいません、大丈夫です。」

大丈夫じゃなかった。

─原因はあの女だ。

【第三話】おサル介護士、レク企画する

【第三話】おサル介護士、レク企画する

1月10日
遅出に向かう途中、成人式典に向かうヤケに子供っぽい新成人達とすれ違う。
大音量で音楽を流しながらハカマ姿でハコ乗りしたヤンキー達が不愉快さだけを残し走り去っていく。

「おはざぁーす」
制服のポロシャツに着替えてフロアに入ると、先輩介護士のおサルさんが何やら頭をかかえていた─。

【第二話】ダンス・モンキーダンス

【第二話】ダンス・モンキーダンス

1月1日
クリスマスからココで働き始めて一週間、新人の僕を指導する先輩介護士がおサルさんって事を除けば、他の施設と特に変わりはなかった。

大晦日の夕方から何人かの入居者さんたちが自宅に帰っていて、静かな元日を迎えたこの変な小さな老人ホーム、MONKEY A GO-GO。

【第一話】サルもの追わず、サルを追う

【第一話】サルもの追わず、サルを追う

「なあ、がしょう、って漢字コレで合ってる?」
「間違ってます、惜しいけど」

全然惜しくない。

「臥床」だろう。「巨人床」って何だ、何て読むんだ。

どこにでもよくある介護施設の昼下がり、フロアの光景。

少し違ってたのは僕の向かいに座って介護記録と格闘しているこの先輩介護士が、完全にサルだ。