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Care, listen, learn, and ○○ ~ オリエンテーションを終えて ~

ハーバード大学の公共政策大学院、ケネディスクールの一週間のオリエンテーションが終わりました。

ハーバードは他大学院に比べ、オリエンテーションが充実しているとよく聞きます。その評判を裏切らず、時間・質ともに極めて重厚な一週間でした。

月曜から金曜まで、朝8:00~17:00まで、せわしなくイベントが並びます。イメージが湧くように、いくつかイベントの具体例をあげます:

  1. ケネディスクールのDean(学長)であるDouglas Elmendorfからのウェルカムメッセージ →今日の本題です。

  2. 一年次の必修科目の概要説明

  3. 二年生によるパネルディスカッション

  4. 様々なリソースの紹介(図書館、IT、データベース、医療、などなど)

  5. (ひたすらに)ボンディング

特に最後のボンディングについては飽きるほどに時間が設けられています。MPPの学生同士の自己紹介に始まり、毎日中庭で開かれるコーヒーブレイク、ランチ、MPP以外の学生も含めてグループを組んで自分たちの目標を話し合うセッション、チャールズ川でのボートクルーズ、毎夜バーで開催される飲み会などなど。

多様なバックグラウンドの学生たちとひたすら対話する中で多くの刺激や気づきを得ることができましたが、それらについてはまた別のエントリで書きたいと思います。


今日は、先ほど挙げた1点目、Dean(学長)からの新入生へのメッセージを聞いて思ったことを書いてみたいと思います。

(当日は口頭のメッセージでしたが、原稿がウェブサイトにアップロードされていました。興味のある方はぜひ先に読んでみてください。)

ここからは私の(大幅な)意訳&省略で、Dougのメッセージを掻い摘んでお届けします。

ここケネディスクールには、多様なセクターから多様なトピックを研究する人々が集まり、見ての通り日々多様な意見をぶつけ合っています。それでは、これだけ多様な人々で構成されたコミュニティが、なぜ一つにつながっているのでしょうか?

それは皆、Public problems (人々や社会が抱える問題)の解決に身を投じているからです。

問題を特定することそのものは難しくありません。特定した問題をSNSやメディアで批判することも容易いことです。しかし、私たちはそれらの問題を「解決する」という極めて難しい任務を負っています。

ここケネディスクールで問題の解決を目指す上で、大切にすべき態度4つをお伝えしたいと思います。

第一に、care(関心を寄せること)。身の回りの人々、自分と異なる人々、自分に反対する人々、そしてとりわけ私たちが享受した恩恵と機会を得ることができなかった多くの人々に思いを馳せてください。

第二に、listen(聞くこと)。人々が世の中をどう見ているのかを、できる限り理解するように努めてください。自分の意見を捨てる必要はありません。誰かの意見が聞くに絶えないこともあるかもしれませんが、それでもまずは寛容に、好奇心を忘れずに、人々の言葉に熱心に耳を傾けて下さい。

第三に、learn(学ぶこと)。良い考えを持つことと、実際に変化を生み出すことは違います。問題解決をリードするには、どうすれば現状を変えられるのかを学ばなければいけません。私はこれまで、正しい危機意識を持っているにも関わらず変革を起こせなかった「リーダー」たちを数多く見てきました。彼/彼女らに足りなかったのは十分な学びでした。自分の強みをどう認識し、自分の弱みをどう補えばいいのか、それがわからなかったのです。皆さんにはここケネディスクールの時間を最大限生かして、広く深く学んで欲しいと思います。

そして最後に、hope(希望を持つこと)。学べば学ぶほど、問題の解決は途方もなく難しいと感じることがあるでしょう。そしてそれは間違っていません。問題を解決するのは難しいことなのです。だからこそ私は、「楽観的になれ」と言うつもりはありません。「楽観的であること」と「希望を持つこと」は違います。希望を持つことは、何もかもきっとうまくいくと思い込むことではありません。一人一人の人間が問題の解決に向けてプラスの変化を起こせるということを、信じ抜くことなのです。世の中では今日も、たくさんの前進が起きています。それは偶然や幸運によるものではありません。良い政策と良いリーダー(Good public policy and good public leadership)が、コミュニティを超えて、国を超えて、我々の共有するこの世界を前に押し進めているということの現れなのです。

だからこそ、希望を持って下さい。あなたには問題解決に貢献できる力があります。戦争ではなく平和を、欠乏ではなく繁栄を、抑圧ではなく自由を、不正ではなく公正を、退廃ではなく持続を、この世界にもたらすことができるのです。

問題の大きさに怖気づかずに、プラスの変化を人々と社会にもたらしましょう。あなたを今ここで、世界に変革をもたらそうとする何千人ものコミュニティの一員に迎えたいと思います。

ようこそ、ハーバードケネディスクールへ。

Welcome to Harvard Kennedy School’s new students - Doug Elmendorf, Dean of Harvard Kennedy School

これをリアルタイムで聞いていた私は、終盤の一言にハッとさせられました。

Care, listen, learnと続き、4つ目の動詞は何だろうと考えていた私は、恐らくactやdoといった「行動」に関するものが来ると思っていました。「ハーバードケネディスクールのモットーは”Ask what you can do.” 学んだことを生かし、自分自身ができることを行動に移せ」 

ーーーそんなメッセージを予期していました。

しかし実際に聞こえたのは、Hope - 希望を持てというメッセージでした。はじめは驚きましたが、彼のメッセージを聞けば聞くほど、この単語を選んだ意味がよくわかるように思えました。

「行動するのは当たり前。しかし、実際に動けば動くほど、問題の大きさに、無力感に押しつぶされそうになるだろう。そこで挫折することは簡単で、世の中に不平を言う側に回ることも簡単だ。だが、そうなっては世界に変化はもたらせない。Care, listen, learnの先の世界で、そこでこそhopeが必要になる。自分の力を信用せよ。」

Deanはこんなメッセージを投げかけてくれたのだと思います。

私はまだ経験も浅く、彼が言うほどの無力感に苛まれたことは正直ありません。それでもここからの2年間を過ごした先でその苦難に飲み込まれることがあると思います。そんな時にも彼の言葉を胸に刻んで、前向きに生きたいと思いました。

素敵なスピーチを聞けました。

ひとまず、care, listen, learnの3つを極める一年目を始めたいと思います。

ではまた。

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