みんな若いプログラムだからこそ
今日は簡単に。
前回も紹介した通り、ケネディスクールには4つのプログラムがあります。その中でも、平均年齢が最も若いのがMPP(Master in Public Policy)という私の在籍するプログラムです。
年によって変動はありますが、平均年齢はおよそ26歳、社会人経験年数は平均3年です。他のプログラムは軒並み平均社会人歴が5年を超えます。また、海外の社会人向け大学院の中でも比較的若めのプログラムです。MBAでも若いところで平均27~28歳というところが多いと思います。
平均年齢が26歳になるくらいですから、年齢の幅もそこまで広くありません。個人的な感覚では23歳~28歳に8割くらいの生徒が当てはまります。そして私もこの層に入ります。
さて、社会人大学院のメリットの一つに、経験豊かな同級生から多くを学べるということがあるでしょう。私が先日参加した一つの授業はハーバードの大学院生であれば誰でも受講できるものでしたが、そこには老若男女様々な学生がおり、中には国際的なNPOでトップを務めていたような重鎮も混じっていました。こういった授業は大変面白く、長年の経験をもとに話すコースメイトから多くの学びを得ることができます。生徒同士の距離感も得てして近いため、年齢に関係なく授業前後に話してそういった重鎮と仲良くなることもできます。これは特に若い層にとっては大変貴重な機会です。自分の視野を広げることができますし、キャリアの選択肢を考える際にもロールモデルになる人に出会えるかもしれません。
私がMPPに入る前に感じていた一つの懸念はこの点に関するものでした。MPPはかなり平均年齢が若く、MPPで固まって同じ授業を取ることが多いため、いわゆる「重鎮から学ぶ」ことは期待できないのではないかと考えていました。
一方で、2週間ほど必修の授業に参加してみて、今は「これはこれでありだな」と思っています。「若いプログラムだからこそ」の魅力もあるということが分かってきたからです。
まず、(小さなことですが)相手に気を遣う必要がありません。日本文化で育ってきている自分にとって、いくら同級生といえど年が5つ以上離れた相手だとやはり少し気が張るものです。しかしMPPでは基本的に皆同年代ということがわかっているので気が楽です。(そもそもあまりお互いに年齢を確認することはありませんが)
しかしもっと大きな魅力は、経験を言い訳にできなくなることです。これは私にとって新しい気づきでした。
国やセクターは違えど、MPPには(言ってしまえば)大した職位に就いていた人などいません。先ほど紹介したようなNPOの代表だったり、企業の役員だったり、政治家だったり、いわゆる組織の重要な意思決定者だったような人はほとんどおらず、(またも言ってしまえば)基本下っ端です。
しかしそんな中でも、授業では極めて鋭い指摘をする生徒がいます。頭の回転が驚くほど速い生徒がいます。周りを巻き込むのがうまい生徒がいます。社会人歴は違わないのに、です。
年齢に多様性のあるコミュニティであれば、「おそらくあの人はいろんな経験をこれまで積んできたんだろう。自分はまだ経験が浅いから仕方ない」と経験を言い訳に自分とその人の間に(無意識的に)壁を作っていたと思います。そしてその壁は、時に自分への甘えを許す壁になります。(経験がある人に任せればいいや、発言しなくていいや、などなど)
ですが、そのやり方はここではできません。自分とは(ほぼほぼ)同じ時間を世界のどこかで過ごしてきて、それでいて自分より優れている素質を持っているのですから、経験の「密度」が違うのです。経験の「長さ」は(年をとらない限り)変えられませんが、「密度」は努力次第で高めることができます。自分より優れている同年代の生徒を見ることは、素直に尊敬につながりますし、「自分は経験の密度を高め切れていなかったのではないか」という内省にもつながります。
毎日同年代の生徒といくつも授業をともにすることで、日常的にそれを体感できるMPPのこの環境は、「重鎮から学ぶ」スタイルとはまた異なる学びがあるなと最近は思います。
ではまた。