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英スナク首相 辞任スピーチ【日本語訳】

今日本では都知事選が話題ですが、その数日前にイギリスで政権交代がありました。

選挙後に保守党党首・スナク首相が行った退任スピーチは、極めて潔く素晴らしかったのですが、全訳が見つからないので自分で日本語訳してみました。(一部意訳が含まれます。)

スピーチの動画はこちらです。

私は彼の政策には反対する点も多々ありましたが、このスピーチには心から感動しました。敗者のスタンスとして、手本にすべきものだと思います。

全文と日本語訳

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Good morning. I will shortly be seeing His Majesty the King to offer my resignation as Prime Minister. To the country, I would like to say, first and foremost, I am sorry.

おはようございます。私はこのあと国王陛下にお会いして、首相の職を辞することをお伝えする予定です。この国の皆様にまず第一にお伝えしたいのは、申し訳ないという気持ちです。

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I have given this job my all. But you have sent a clear signal that the government of the United Kingdom must change and yours is the only judgement that matters. I have heard your anger, your disappointment; and I take responsibility for this loss.

私はこの仕事に全てを注いできました。しかしながら国民の皆様は、イギリス政府は今変革せねばならないという明確なメッセージを示されました。そして皆様のその判断こそが、唯一重要なものです。皆様の怒りや失望の声は、私の耳に届いています。私が、この敗北の責任を取ります。

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To all the Conservative candidates and campaigners who worked tirelessly but without success, I am sorry that we could not deliver what your efforts deserved. It pains me to think how many good colleagues who contributed so much to their communities and our country, will now no longer sit in the House of Commons. I thank them for their hard work, their service.

努力を惜しまず働いてくれたわが党(保守党)の全ての候補者と党員には、その努力に見合う結果を出せなかったことをお詫びします。各々の地元やこの国に対して多大なる貢献をしてきた多くの優秀な仲間たちが、庶民院(下院)に議席を置けなくなると考えると、心が痛むばかりです。皆さんの多大なる努力、そして奉仕に感謝します。

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Following this result, I will step down as party leader. Not immediately, but once the formal arrangements for selecting my successor are in place. It is important that after 14 years in government, the Conservative Party rebuilds, but also that it takes up its crucial role in opposition professionally and effectively.

今回の結果を受けて、私は党首を辞任します。今すぐではありませんが、後継者選びの正式な手続きが整い次第すぐに職を離れます。これまで保守党は14年間政権を運営してきましたが、今後はまず党を再建し、そして野党としての極めて重要な役割を、矜持をもって効果的に果たしていくことが何より重要です。

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When I first stood here as your Prime Minister, I told you the most important task I had was to return stability to our economy. Inflation is back to target, mortgage rates are falling, and growth has returned. We have enhanced our standing in the world, rebuilding relations with allies, leading global efforts to support Ukraine and becoming the home of the new generation of transformative technologies. And our United Kingdom is stronger too: with the Windsor Framework, devolution restored in Northern Ireland, and our Union strengthened. I’m proud of those achievements. I believe this country is safer, stronger, and more secure than it was 20 months ago. And it is more prosperous, fairer, and resilient than it was in 2010.

私が初めて首相としてこの場に立った時、最重要課題は経済の安定を取り戻すことだとお伝えしました。その後インフレ率は目標水準に回復し、住宅ローン金利は下がり、この国は成長を取り戻しました。世界におけるこの国の地位を、我々は向上させました。同盟国との関係を再構築し、ウクライナへの国際的な支援枠組みを主導し、社会を変革する新世代のテクノロジーの拠点へとイギリスを進化させました。 そして、この国はさらに強くなりました。ウィンザー枠組み(※)を通じて、北アイルランドの自治は復活し、我々の連合は強化されました。私はこれらの成果を誇りに思っています。この国が今、20か月前よりも安全になり、強くなり、安定したこと、そして、2010年当時よりも繁栄し、公正で強靭な社会になったことを、私は確信しています。

※ウィンザー枠組み:英のEU離脱後に問題となっていた、北アイルランドとアイルランドの間の通商問題の解決枠組み。英とEUとの関係性が回復した契機とされることもある。

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Whilst he has been my political opponent, Sir Keir Starmer will shortly become our Prime Minister. In this job, his successes will be all our successes, and I wish him and his family well. Whatever our disagreements in this campaign, he is a decent, public-spirited man, whom I respect. He and his family deserve the very best of our understanding, as they make the huge transition to their new lives behind this door and he grapples with this most demanding of jobs in an increasingly unstable world.

キア・スターマー代表(労働党党首)は、政治上は私の敵ですが、まもなく我々の首相となります。彼が首相として成功することは、我々全員の成功であり、彼と彼のご家族の幸運を祈願します。もちろん、選挙戦では多くの意見の相違がありました。しかし、彼は立派で、社会を思う心にあふれる男です。私は彼を尊敬しています。 今後彼とそのご家族は、私の後ろにあるこの建物(首相官邸)で生活していくことになります。そして彼は、この不安定化する世の中で最も要求の厳しい仕事に、これから取り組むことになります。そのことを我々は最大限理解し、支援していく姿勢が必要です。

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I would like to thank my colleagues, my Cabinet, the Civil Service, but most of all I want to thank my wife Akshata and our beautiful daughters. I can never thank you enough for the sacrifices you have made so that I might serve our country.

これまで内閣や官庁で一緒に仕事をしてくれた仲間たちに心から感謝したいと思います。そして何よりも、妻のアクシャタと美しい娘たちに、最大限の感謝を伝えたいと思います。私がこの国のために全力を尽くせるよう、彼女たちが身を削って支えてくれたことに、私は感謝しても感謝しきれません。

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One of the most remarkable things about Britain is just how unremarkable it is that two generations after my grandparents came here with so little, I could become Prime Minister and that I could watch my two young daughters light Diwali candles on the steps of Downing Street. We must hold true to that idea of who we are, that vision of kindness, decency, and tolerance that has always been the British way.

私の祖父母はほとんど何も持たずにこの国にやって来ました。しかしそこからわずか二世代で、私はこうして首相を務められました。そしてダウニング街(首相の居住地)の階段で、二人の娘がディワリ(※)の蝋燭に火をともしているのです。こんな体験ができることそのものが、イギリスという国の最も素晴らしい点の一つでしょう。 我々はイギリス人として、その親切さ、礼儀正しさ、そして寛容さを、これまで同様、保持していかなければなりません。

※ディワリ:ヒンドゥー教の祭典の一つ。暗闇の中で蝋燭に火をともす。スナク氏は英国初のインド系首相であり、ヒンドゥー教信者。

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This is a difficult day, at the end of a number of difficult days. But I leave this job honoured to have been your Prime Minister. This is the best country in the world and that is thanks entirely to you, the British people, the true source of all our achievements, our strengths, and our greatness. Thank you.

これまで多くの苦難の日々を乗り越えてきたからこそ、今日という日が本当につらくてなりません。しかし、私は皆さんの首相であることができたことを誇りに思いながら、この場を去りたいと思います。 この国は世界で最も素晴らしい国です。そしてそれはひとえに、イギリス国民の皆様のおかげです。あなたこそが、この国のあらゆる成果、強さ、そして偉大さの真の源です。ありがとうございました。

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(英文:英政府プレスリリースより引用)
(ヘッダー画像:UPI


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