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『ミザリー』(Misery)

スティーブン・キング読み返し。



大ヒット恋愛小説『ミザリー・シリーズ』
作家ポール・シェルダンは
「ミザリー・シリーズ」に終止符を打とうとしていた。
最終作を書き終たポール・シェルダン。
しかし雪道で自動車事故により瀕死の重傷を負う。
目を覚ました彼の前には
『ミザリー・シリーズ』の熱狂的な愛読者だと自称する
中年女性アニー・ウィルクスだった。

1990年の映画は鮮烈だった。
ミザリーと聞くと
主演のキャシー・ベイツしか出てこない。
ついでに彼女が演じた役はアニーだ。
ミザリーだと未だに思い込んでいる人は少なくない。
彼女はこの映画でアカデミー主演女優賞を受賞。

後々『タイタニック』にも出演していた。
彼女演じる品の良い貴婦人が 
実は
ハンマーを振り回してタイタニックを沈めるのか?!
と想像してしまった。
後年、映画「フライド・グリーン・トマト」で
ハンマーで家の壁をブッ壊していたのだから
意外と外れた想像でもなかった。
(この映画
 「ミザリー」のパロディ要素もあったのでアリか)
後日、スティーブン・キングは
彼女を想定した
黙秘:Dolores Claiborne」を書いている。

ポール・シェルダン役。
大人になるまで
ロイ・シャイダーだと思い込んでいた。

スティーブン・キングの実体験をベースに
モデルにもなっているであろう「ジェニーン・アン・ジョーンズ事件」
ーこの事件も 闇深いなあ、と思う。

「ミザリー:Misery」
直訳すると
哀れ・惨めさ・悲嘆 
そんな意味になる。
作中のアニーも そんなこと呟いてたような・・・
気のせいか。


雪山の山荘で最終話を書き上げた
ーシャイニングのジャックも小説を書いていた。


もし ジャックの書いていた小説が「ミザリー」で
「ミザリー」の中では「ミザリーの生還」が書かれて・・・
    ーオーバールックホテルの見えない筈の住人達なら
     そんな壮大なインスピレーションを与えてくれたかも知れない。


ジャックが この時使っていたタイプライター
ポール・シェルダンが「ミザリー・シリーズ」最終話を
このタイプライターで書いていたら・・・?
ミザリーが希望した「ミザリーの帰還」
   ー書き上げたタイプライターが
    オーバールックホテルの物だったとしたら。



キング世界が煮込まれた頭の中では 
楽しい想像が巡ってしまう。


スティーブン・キングが帰宅すると
自宅書斎に
ファンを名乗る男が立て籠っていた。


ある時、スティーブン・キングに
しつこくサインをねだるファンが来た。
断っても粘るのでサインすると
そのファンはキング作品について
語り始める。
数年後、
ジョン・レノンが射殺された
ニュースが流れる。
犯人は あの時サインをねだった男だった。


同じ人物かは覚えていない。
そうだったとしたら、怖すぎるだろう。
夢に出てもオカシクナイ!
そう思っていたら
「ダークハーフ:The Dark Half」
「秘密の窓、秘密の庭:Four Past Midnight」
へと繋がっていた。

スティーブン・キング・・・さすが だ。


もし原作を読むのなら
できることなら 紙の本がいい。
電子版では再現しきれていない作品のポイントが
目で確認できて、より一層恐怖が深まる。
(原書が一番いいのだが、ネイティヴな方に任せよう)

作中
アニーによって警官が殺害されるシーンが出てくる。

映画では老警官が射殺された。
なのだが
小説だと、その方法が えげつない。
殺害されたのは若い警官。
手を芝刈り機で切断され、
背中に杭を突き立てられる。


映画でインパクト絶大だった
動けないポール・シェルダンの
足首がハンマーで折られるシーン。


小説では
足首を斧でバッサリ切断!
指なんか
小型の電動のこぎりで切断・・・


アニーの狂気の程が
実によく表現されているのだが・・・
映画以上に
めちゃくちゃ痛い!
何度読み返しても 
この辺りのシーンは「痛い!痛い!」と
声に出してしまう。


文庫だと500ページ?600ページ?
十分なボリューム。
動けないポール・シェルダンの寝ているベッドと
その周囲だけしか 出てこない。
舞台が極めて狭いにも関わらず
読みながら
何時しかポール・シェルダンにシンクロしている。

スティーブン・キングは
小説という触媒を使って
読者を「作品世界」へと召喚しているに違いない。
煮込まれた魔法使いの鍋の中身には
そんなモノも詰まっている。


ドラマ「キャッスルロック」
アニーのエピソード。
女優さんは美人との誉高い方なのだが
登場した瞬間
「アニー」だった。


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