かくも愛しき雑草たち!
稲垣栄洋(三上修・絵)『身近な雑草のゆかいな生き方』(草思社、2006年)を読んだのは、もう6年も前になる。それでも記憶に残っているのは、植物の多様な世界が紹介されていて面白かったからだ。雑草の生き方や暮らしぶりを、擬人化して表現していて、科学的な視点ではないかもしれないが、知れば知るほど人間臭い雑草に親近感を覚えた。
特に面白く感じた雑草が3種類ある。
コオリユニ
一つはコオリユニで、この花はわざと下向きに咲いて蜜を吸いにくくし、雄しべの先はT字形の構造をしている。これは雄しべを足場にしてぶら下がったアゲハチョウが羽をばたつかせている間に掃除モップの先のように体に花粉をつけるためである。植物からすれば、ストローのような長い口を持つチョウは花粉を運ぶことなく蜜だけ吸ってしまう厄介者だが、こうすれば花粉を付着させることができるのである。虫を媒介にして受粉を果たそうとする雑草は多い。そのために様々な工夫をこらす雑草に驚いた。
ネナシカズラ
ほかの植物から栄養分をもらって生活する寄生植物であるネナシカズラは、なんと根も葉も持っていない。ネナシカズラは相手の植物に完全に寄生する生活を選び、根や葉を捨てたのだ。もし寄生に失敗すれば生存の道は残されていない。この本を読んでいた頃、私も完全なパラサイト生活だったが、これと決めた道で大成できるよう、相当の覚悟で寄生植物の道を選んだ(?)ネナシカズラを見習いたいと思ったものだ。
ホテイアオイ
池や水路一面に紫色の花を咲かせるホテイアオイは、その美しさから「ウォーター・ヒヤシンス」と呼ばれるほどだが、一方で「ビューティフル・デビル」とも言われる。その異常なまでの繁殖力で池や水路を覆いつくし、船の往来を妨げたり、水の流れをせき止めるからだ。しかし、このホテイアオイはきれいな水の池に入れても大きくならない。汚れた水の方が窒素やリンなどの栄養分が豊富だからだ。ホテイアオイの異常繁殖は人間が水を汚してしまったために引き起こされているのだ。まるでホテイアオイはその生きざまで、環境破壊をする人間に警告を発しているようだ。
このように様々な雑草の驚くべき性質が取り上げられていて、引き込まれてしまった。三上氏による写実的な挿絵も趣深い。このコンビによる作品は、他にも『身近な野菜のなるほど観察記』(草思社、2005年)がある。こちらもオススメだから読んでみてほしい。