はらっぱ通信単品

はらっぱZINE vol.1 孤独のグルメ

山の駅さんべのブックスペース「はらっぱ図書室」通信
2018.05.20

この本がおすすめ !『孤独のグルメ』
原作 久住昌之×作画 谷口ジロー

はらっぱ図書室のおすすめ本を紹介するこのコーナー、記念すべき第1回は食べもの系マンガの名作「孤独のグルメ」です。近年ドラマ化され、そちらも人気ですが、何より原作が凄い! おっさんが一人で外食を楽しむだけのマンガですが、そこに世界を自分の尺度で観るヒントが隠されているのです。

「なにがうまい」くらい自分で決めていい
主人公の井の頭五郎は輸入家具商、彼の楽しみは誰にも邪魔されず、ただ一人で食を楽しむこと。初めて入る町の食堂、喫茶店、居酒屋で、自分が今何を食べたいのか、メニューに惑わされながら、注文をし、食事を摂ります。ただ、決して彼はいわゆる「グルメ」ではありません。デパートの屋上のフードコートのたぬきうどんに舌鼓を打ち、オーガニック系食堂をくさしながらイワシカレーをおかわりし、公園の茶店でおでんを食べ眠くなってしまうような人物です。しかし、そこに彼の美学があるのです。公園でチェリオを飲み「うーん、このわざとらしいメロン味」と、嬉しそうに「これだよ、これ」と言わんばかりの表情をみせます。「うまさ」の絶対値しかみない貧困なグルマンとは全く異なる、場所や店の持つ多彩な雰囲気を自分の価値観で楽しむ色彩豊かな独自の食の世界を五郎は観ているのです。
出版は1997年ですが、不朽の名作と言っていいでしょう。ロングセラーでネットの評判から火がつき、2012年にドラマ化、2015年にマンガ2巻が発売されています。原作の久住昌之さんは『食の軍師』『花のズボラ飯』等、様々なアプローチで食の作品を制作、先年亡くなった作画の谷口ゴローさんは鳥取出身でフランスでも高く評価される画力を誇る漫画家、オススメです!!


ブックスペース・ストーリーズ①
居ごこちのいい場所をつくろう!

 山の駅さんべのブックスペースはらっぱ図書室は、2017年9月9日にオープンしました。ですが、私たちがブックスペースを作ろうと思い立ったのが7月。2ヶ月でトントン拍子に話がすすみ、各新聞にもとりあげていただき、思いもよらない反響をいただきました。ここでは、この図書室ができた話を書いていきたいと思います。

自分で運営したくない!


 図書室は私たち西嶋夫婦が企画・運営しています。2人とも東京出身で、私が2016年7月に大田市の地域おこし協力隊(山村留学担当)になったことで島根にやってきました。妻と小さな娘は無事島根についてきてくれたわけですが、妻は在宅の仕事と子どもの世話で島根を楽しめているとはいえない状況。三瓶の山に住んでいて、積極的にグイグイ友達をつくるタイプでもない妻。カフェや博物館に行ったりというのもなかなかできず、どうしたら島根でも「自分らしく」いられるのか2人で考えました。
 そして出て来たキーワードが「本」。本がある場所なら、自然と長居ができるし、文化の香りがする、そして人とも本を介していい距離感で繋がれる。「これだ!」と思うと同時に、「自分で運営したくない」とも思いました。接客が苦手な妻と、仕事で飛び回る私。とても民泊やカフェを開くなんてできない!という結論はすぐに出ました。ならば、取れる手段は「間借り」! 既にスペースを運営しているところに本棚を置かせてももらい、あわよくば自分たちも利用したい! そんな話をスペースが余っている山の駅さんべに相談に行ったのでした。
                      つづく


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