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わらしべ式高級タオル。

シンガポールのマリーナベイへいつか行ってみたいりょうです。
なぜこんな画像をトップ画像にしたのかというと察しのいい人ならわかるかもしれない。そろそろ時効だと思うし、そもそも犯罪ではないのでここで書いて成仏させたい。

まず前提として私は割と人種のサラダボウル的なマンションに住んでいる。アジア圏の人が大半だが、かなり国際的だ。なぜかいつもラインでビデオ通話しながらエレベーターに乗る人や、ランニングパンツのままゴミ出しに出てくるドレッドヘアーのおじさんも住んでいる。肌の色の黒い大柄の人はいつもオープンカーの高級外車で爆音で駐車場に停めるので帰宅したら分かる。ここには書けないが、とてもお堅いお仕事をしているしかなり気さくな人だ。息子はビビッて私の足の後ろに隠れてしまう。人を見た目で判断するんじゃないよと言ってもまだ分からないお年頃だ。本能的に隠れていると思うとちょっと可愛いなと思った。

息子と同い年の女の子のママさんも住んでいて、ママ友というほど親しくはないが、会えばちょっとした近況や挨拶くらいは出来る人もいて嬉しい。
それに親子で別の部屋を借りているペアがかなりいると管理人さんが教えてくれた。個人情報が筒抜けな管理人だ。うちの家の事情もこうして他の住人に話されている可能性がかなり高い。

管理組合もあり、子どもを産んだ年に会計をやって欲しいと頼まれたが、月に一度夕方に数時間、拘束されるのは非常に厳しかった。その頃はまた仕事に復帰するために保育園探しに奔走していた事もあり丁重にお断りした。

さて本題だ、私は午前2時頃にうとうと起きる。踏切に望遠鏡を担いで持っていき天体観測するためではなく、ポケモンのジム活をするためだ。

それはまだまだ寒さの残る3月頃の出来事だった。
しっかり防寒と手袋をして自転車にはスマホを固定する器具をつけていざ冒険へと出かけた。

家を出て自転車に乗っていると遠くから…おおおおおおぉぉぉえええええ~!!と嘔吐する声が小さく響いてきた。こんな時期に珍しいなと思いながらいつものルートを進むとその声がどんどん大きくなってきた。そして明らかに不自然な位置で個人タクシーがハザードを点滅させていた。家から300mくらいの場所だった。

若い女の子が道端に倒れこみ信じられない程の量のゲロを吐き散らかしていた。もう身体を起こす体力も残ってない様子で、長い髪の半分くらいにはゲロが付着していた。涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。

助けなければと思い、思わず自転車を降りていた。パッと見でヤバいと思い「救急車呼びましょうか」と運転手に話しかけた。
運転手は「ん~…大丈夫ちゃうか?はぁ~…メンドクサいなぁ。…支払いもしてくれへんし。なんか言葉も微妙に通じへんねん。さっきも吐きそうになった時、ウエッ!って言って下向いて手で口抑えたから、急いで停めてワイが降ろしたんや。車内で大ゲロ吐かれたら次の日にも影響するから困るねん。だから酔っ払い乗せるの嫌やねん。」とお話にならなかった。個人タクシーじゃなかったら本社に通報するレベルのクソな返答だった。

女の子の方に話けてみた。日本に住んでいるんだから簡単な日本語なら理解出来ると思った。「ダイジョウブ?」と聞くと首を横に振った。そらそうだ。Google翻訳を使って、「救急車で病院へ行くか?」と聞くと、「House
Near…」と蚊のなくような声で返答があった。日本語より英語の方が得意らしい。家が近いから歩いて帰りたい様子だった。

色々とやり取りをしている間に近くに自販機があったので、お水を買ってきて欲しいと運転手にお願いした。
運賃の支払いはIs it okay if I touch it instead of a wallet? I will pay(財布代わりに触ってもいい?代わりに支払いします)という画面を見せたらウンと頷いてくれた。
意識もはっきりしてきて割とやり取りできるくらいになってきてくれた。水をあけ口をすすぎ少しずつ飲むように言った。マザーズバッグにタオルを入れていたので髪を拭くように渡した。しまむらで買ったお気に入りのポケモンタオルだったが背に腹は替えられない。

支払いのレシートを見ると自販機の水代もしっかり手書きで書かれていた。私は絶対このタクシーには乗りたくないなと思っていた。
そうして個人タクシーはブォンと走り去っていった。

立てるようになり歩いて帰るというので一緒に行こうか?というとウン…
I want my mom to explain(ママに説明してほしい)と言っていた。
女の子がGooglemapに自宅の住所を入れてくれた、なんとそこは私も住んでいるマンションだった。ひっ!OK…OK…と私の方が動揺してしまった。

忘れていたがその女の子が吐いていたのは飲食店のド真ん前だった。
その店は電気が点いていたが24時間営業ではないため無人だった。
明日の朝、早番の人が水でバーーー!!っと流してくれることを祈った。
掃除出来ないことを申し訳なく思いつつを移動することにした。

自転車を停めさせてもらって、一緒に歩く、千鳥足を時折支えながら案の定家までに4回程うずくまっていた。プチゲロを吐く女の子の背中をさすり落ち着くのを待つ。

300mの道程を牛歩で歩く。なんとか自宅へ着き、彼女の部屋の意を決して呼び鈴を押す。ママに説明してほしいというくらいだから厳しめのママなのかな…関わらんかったらよかったんかもしれんな…とドキドキしていると深夜にも関わらず「ハイハーイ!!」とすぐにドアが開いた。そこには肩を担がれた娘の姿と私の姿があった。ママは驚いていて「あら…ツブレタのね」察しがよかった。

幸いママの方は日本語が比較的通じていて、かくかくしかじかを伝えると「あなたは命の恩人!かならずお礼する!あなたどこに住んでるの?」と言われた。名乗るほどのものじゃないです、それよりも娘さん介抱してあげてと遠慮したが、強引にメモ帳とペンを渡されて、住所と名前を書くことになった。「アッ!場所同じね~OK~!」と納得してくれた。

きっと店でその場の流れもあって無理に飲まされたのだろう。慣れない時期だってある。娘さんのこと怒らないであげて欲しいとお願いして部屋を後にした。なんだかぐったりと疲れてしまった。もううっすらと夜が明けようとしていた。

自転車を取りに行く頃にはポケ活する気力はすっかり失われて、自転車を回収して2個だけジムを塗り替えておとなしく帰宅した。さっきあったことを夫に話したかったが寝起きの夫に言っても信じてもらえないだろうと思っていつも通り家を送り出した。

その日の夕方、保育園に通う息子を連れて帰宅したころ我が家の呼び鈴が鳴った。例のママさんと酒でパンパンに顔の浮腫んだ娘さんが来た。
息子は呼び鈴が鳴ると大興奮して玄関に飛び出していく。
少し遅れて私が鍵をあけると「ワァ~ちっちゃい子!カワイイカワイイネェ~!!」と相変わらずの爆音ボイスのママさんに息子は一瞬たじろいだ。

「…ゴメイワクヲ、オカケシマシタ」そう言って深々を頭を下げられ、誰もが知る高級チョコレートの袋を差し出された。
そんな!受け取れませんと断ったが、受けとってくれんと帰らない勢いだったのでこちらも有難く頂くことにした。それとこれも受け取って欲しいと駅前デパートの袋に入った高級タオルももらってしまった。しまむらのタオルがわらしべ式にランクアップした。子育てしてるとタオルは何枚あっても助かる。内心ガッツポーズだった。ありがてぇ。

そしてその後もゴミ出しやエレベーターや集合ポストであの親子に会うことがちょいちょいあった。お互いに会釈する。お酒は飲みすぎ注意だ。
助け助けられた話。

むかしむかし、20歳頃に友人宅でロングのストロングチューハイを5本くらい飲み泥酔。帰り道のコンビニのエロ本コーナーで、各種エロ雑誌を手に取りレジで「あひゃ~コレは同棲してる彼氏にあげるんで~す!お土産いえ~い!」と大騒ぎした女がいる。私だ。どれだけ酔っても記憶を失くさないタイプ。

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無印良品のポチ菓子で書く気力を養っています。 お気に入りはブールドネージュです。