読書メーター 2024年7月
7月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:3761
ナイス数:16
J・S・ミル-自由を探究した思想家 (中公新書 2757)の感想
80点を期待していたら62点という感じで、読む価値があるかと言われれば及第点ギリギリという感じ。国民の知的・政治的な教育、そして全民の積極的な政治参加の強調。
読了日:07月30日 著者:関口 正司
時間と自己 (中公新書 674)の感想
身構えて読み始めたが、造語や記号弄りはほぼなく、文体も構成も人に読ませるようにかかれていた。分裂病者の未知性への憧憬を「先の祭り」、うつ病者の未来での“現在完了”を「後の祭り」、そして癇癪者の水平方向な無限感を「永遠の現在」と見る。精神病者の時間感覚を通じて、自己の認識、および自己を認識する際の時間の概念の役割を論じている。 哲学において、死に並ぶほどに、「私」が話題になることを不思議に思っていたが、本書を通じて「もの」から「こと」がぺりぺり剥がれる感覚を覚えたことで、「私」の深刻さが分かった気がする。
読了日:07月25日 著者:木村 敏
民主主義とは何か (講談社現代新書 2590)の感想
論ではなく史。強調されてきたのはやはり市民一人一人の積極的な当事者意識。そして公権力に抵抗する力が存在し、かつ抵抗が強すぎないこと。 自由と民主的は緊張関係にある。少数派は間違っているとは限らないし、多数派の意見を相対化する機会にもなる。
読了日:07月25日 著者:宇野 重規
選書846 東大入試 至高の国語 第二問 (朝日選書 846)の感想
安易な同情を戒め、加害者意識を持つように促す。それは食物や自然環境に対してだけでなく、人間社会的なものに対しても関係があるという。死の後に生、嵐を伴う春といった生命循環を、資産相続や駅伝の襷などの人間社会における環と結びつける。そうして死を遠ざけたり、一対一で借りを返し合うような直線的な世界観を否定する。 東大文学部の人は弁証法仕立てで論を進めて、文学批評ぽいもので締めるのが慣例になっているんだなと、笑ってしまった。
読了日:07月20日 著者:竹内康浩
社会主義の誤解を解く (光文社新書 507)の感想
共産主義か社会主義かという名乗りは、他の社会主義的な思想と自分たちの思想を区別するための、便宜上の差でしかないという。また各国の共産党はレーニンの政治的な要求によって生まれた、当時の当座の集団でしかないものの残滓が残り続けたと。いまいち知らなかった社会主義の事情を理解できた。自由主義なイデオロギーが平等を目指していないわけではないというのが、社会主義的な主張の伸張をとどめ、内外の無理解を助長するのだろう。特に日本では。
読了日:07月20日 著者:薬師院 仁志
イスラムがヨーロッパ世界を創造した 歴史に探る「共存の道」(光文社新書) (光文社新書 1199)の感想
イスラムのユダヤ・キリスト社会への寄与や、共存の例を豊富に掲載し、近代以前のイスラムの寛容具合を強調している。情報量こそ豊富だが、それぞれが有機的につながっているとは言い難い。人の営みという時間の流れからも離れて、共存の事例を個別に眺めているという感じで、現在からみた未来への展望を示しているかと言うと微妙。
読了日:07月15日 著者:宮田 律
資本主義全史 (SB新書)の感想
かなり手堅い、縦糸に資本主義をとった近代史。
読了日:07月15日 著者:的場昭弘
近代世界の公共宗教 (ちくま学芸文庫)の感想
日に20pずつで読了。20世紀初頭の学者たちの予想とは反対に、宗教は近代的啓蒙に取り払われるのではなく、むしろ1970年頃から脱私事化の動きすら始めた。当局と一体となったり覇権を争うような上からではなく、近代の価値観と折り合いをつけながら市民と寄り添い、時には普遍的倫理観の代弁者となって、下から社会とかかわるようになっている。私には少し背伸びが必要な内容で、社会学か近現代のキリスト教の政治的・社会的な事件かどちらかについてある程度知っていないと具体と抽象を繋げづらく、苦しい読書でした。為になった気はします
読了日:07月15日 著者:ホセ・カサノヴァ
Rowan of Rin #1: Rowan of Rin (Rowan of Rin, 1)
読了日:07月10日 著者:Emily Rodda
ヒトはなぜヒトを食べたか: 生態人類学から見た文化の起源 (ハヤカワ文庫 NF 210)の感想
p11「再生産の圧力、生産の強化、環境資源の枯渇が、家族組織、財産関係、政治経済、食事の嗜好や食物禁忌を含む宗教的信仰などの進化を理解するカギとなる」。人口密度が稠密になるのを契機に、新技術の開発や文化の変化が起こると著者は言う。嬰児殺し、特に女児を狙うものは、バンドでも近代初期の西欧でも起こっていたという。また戦争も同様の時期、つまり人が溢れているときに発生すると。また、家畜の選択もコスト=ベネフィットの観点から一貫した説明を加えているのが印象的だった。文化とは厳しい状況にさらされたときに生まれるのだ。
読了日:07月10日 著者:マーヴィン ハリス
暗黙知の次元: 言語から非言語への感想
暗黙の知、創発、探究者たちの社会と三部構成だが、基本的に原著者の定義した暗黙知と科学の営為を結び付けて解説している。予感で問題設計をするのだから、それに向けた解決策も、導かれ(う)る結論も完全に明示的になるわけではないというのは、当たり前だが意識されてもいないなと感心した。また第二部以降では世界(特に生物)を階層に分けて捉えている。こうした見解を科学界や社会にまで当てはめ、世界を理解しようとしている。 翻訳者に理系の知識が乏しいからなのか、あまり良い翻訳でないことが透ける。
読了日:07月07日 著者:マイケル ポラニー,佐藤 敬三
「人それぞれ」がさみしい ――「やさしく・冷たい」人間関係を考える (ちくまプリマー新書)の感想
人それぞれと言いつつ、目指されるべき規範は存在し、生得的な格差が覆い隠されるので、社会の分断が起こっていると指摘。関係を壊したくない、迷惑をかけたくないといった動機による個人間レベルの分断もあれば、インターネットを通じて同意見の人たちとだけ繋がる「大いなる単純化」という、ヘイトスピーチなどにも連なる集団的な分断もある。 著者は他人への非干渉という面を強調していたが、私は他の人が使う「人それぞれ」に対して、自身の価値観・感性への絶対性と普遍性という自己防衛的な意図も強く感じている。
読了日:07月03日 著者:石田 光規
美学への招待 増補版 (中公新書 1741)の感想
期待外れ過ぎて140頁で止め。「思考の整理学」を読んでいたときにも感じた無意味を重ねていく感覚があった。章ごとの終盤はまだ内容があったが、そこに至るまでの過程は著者の傲慢な価値観の紹介と微妙な文章力が積み重なっているだけ。著者はCDの音質が悪いと言えるほど鋭敏な感覚持ちでもないし、「視座」といった何か単語を奇妙と表現していいほど言葉を巧みに操れている人間でもないだろう。文化における美学の位置も、自身の美的感度も、この本の文章の上手さも、著者は全てを過大評価していそう。
読了日:07月02日 著者:佐々木 健一
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