たんぽぽを見つけた日には

土手からの景色は3日ぶりに青空が広がっていた
あぁ、太陽はこんなにもあたたかい
昨日までは分厚い雲に覆われて隠れていて
右から左からと力強く吹いてくる風に身体を持っていかれない様に踏ん張った
油断したら飛ばされちゃうのではと思うと怖くて冷たくて
心まで踏ん張った

でも今日は風も優しくて
とても穏やかで自然と気持ちも落ち着く
冷たくて強い風、もう怖くない。

青空に泳ぐ雲をぼーっと眺めている私の首のあたりに息がかかる
ここにいる時、いつも見かける柴犬だった。
こっちに寄って来てクンクン匂いを嗅がれてる
何かを探しているのかもしれないけど
少しくすぐったくて
少し怖くて
ヘラヘラ笑っちゃう。

こういう時私はどんな顔してるかな

ガブっと食べられちゃうかと思った時間は一瞬で
精悍な顔をした柴犬は首にグイっと力を受けて私の事を忘れたように歩き始める
しっぽがフリフリ揺れて小さくなっていく

揺れるしっぽが見えなくなってもまだその先を眺めていた。
なんとなく。

黄色い靴を履いた女の子は手を引かれこちらに近づいてきた
私の隣にしゃがみ込んで
「おくつとおなじいろ~」とぽかぽか笑う
その小さい人差し指でツンツン触られると
なんだか気恥ずかしくてまたヘラヘラ笑っちゃう

こういう時私は幸せを感じたりしている

少し高い所から「もういくわよ」って声が聞こえて気が付くと
黄色い靴の女の子も来たのと反対の道へ進んでいく
女の子の黄色い靴はピカピカに輝いていて
青空と女の子との間にはふわふわピンク色が揺れていた


太陽は暖かくて。そうやって私に存在を伝えてくる

ここがオレンジ色に染まるとき
きっと私も色が濃くなってるかな
だってみんな同じ色になってるもん
きっとそうだ。

青空を渡る雲とピンクが揺れる季節はあっという間に過ぎていく
ピンク色は気持ちよさそうに舞い始める
太陽の暖かさ、冷たかった風も
いつの間にか私たちを優しく包み込む

私も、気が付けばあの子の靴の色とは違う色になって
風が吹くのだけを待っている
今日も空は青くて雲は無く穏やかなひかり

急に背中に風を感じた
ふわっと身体が浮き上がっていく。大丈夫。怖くない。
あぁ、緑はこんなにきれいだったんだ
あの柴犬も黄色い靴の女の子も今日も来ていたんだね
そうか、水の流れはこんなに近かったからだったんだ
大丈夫。大丈夫。

必死に踏ん張ったあの時の風が今は身体を支えてくれていて
安心している。とても心地いい。

このままどこまででも飛んで
わたしはわたしの居場所を
また見つける


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