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Steven Seagal Runs Like a Girl:スティーブンセガールの女走り

去年の夏から突然英会話に通い始めた。仕事で英語が必要なわけでもなく、海外を視野に入れ何かをするような野心がある訳ではない。ただ自宅の最寄駅に「早朝英会話教室」がある事を発見したのだ。一番早いクラスは朝6時半から、とある。

早起きする位なら二度と目覚めなくて結構、というほど早起きが嫌いな自分だが、約束があれば無理にでも起きるだろう。早起き生活に改める良い機会なのではないか。あわよくばついでに英語も習得できる。流石に6時半は狂っているので7時半からのクラスに勢いで申し込んだ。月謝の安い4人までのグループレッスンにしたが、みなよほど早起きが嫌いなのか?蓋を開けて見たら生徒は自分一人だった。

先生は自分より10年ほど年上に見えるニューヨーク育ちのアメリカ人で日本名は「利休」という。「利休」か・・・まぁいい。そこはそっとしておこう。彼は本を何冊か出している文筆家で、市民教室の英語ライティング講座も持っていると聞いた。頼もしい。また独自の英会話メソッドを持っており、それに従えば素早い英語上達が可能である、というような事を簡単な英語を使って説明してくれた。確かに念仏のように同じ句を互いに応酬するシャドウボクシングのような練習方式で、ボディにジワジワ効いてきそうな感じがする。この内容をプライベートレッスンで受けられるなら、と布団と引き裂かれる思いでの早起きも毎週頑張った。

ところが何回目くらいからだろうか。メソッド前の枕に映画や本の話をし始めたら止まらなくなり、シャドウボクシングがお留守になってきた。この利休先生、何を聞いても打ち返してくる全方位的オタクであることが発覚し、色々な事を質問している方が面白いのだ。以降、回を重ねるごとにメソッドは影を潜め、現在に至っては全く忘れられた存在となった。そうこうしているうちに友達のような慣れが生じ、だんだんアイコンタクトと一言二言だけで相手が言わんとしている事がわかるようになってきた。またあろうことか、自分側で説明が必要になった場合は日本語を話せない利休先生に日本語で話しかけまくっている。話が興じてくると英語に苛々し始め、日本語とジェスチャーで伝えるようになってしまったのだ。

とまぁ、こんな感じの英会話(?)教室に今朝も行ってきたばかりだ。今日の話題はおもに「スティーブン・セガール」だった。仕事の関係で今週、後期セガール映画を二本ほど見たのだが、今ひとつ彼の良さがわからなかったのだ。とりわけヘアスタイルが受け入れ難い。だがあれだけの本数の映画に出てる大スターだ。セガール・ネイティブである利休先生に聞けばその魅力をうまく説明してくれるだろう。・・・と思ったが先生の表情は曇った。

これはあくまで利休先生の私見なのだが、いわく彼には二本ほど良い映画がある。だが回を追うごとに面白くなくなっており、また余りに太り過ぎてアクションも振るわず、人々からの敬意が薄れてしまった、とのことだった。そこから先は先生の英語が早すぎてリスニング力が追いつかなかったがこんなような事を言っていた。

なんでも、警察学校に入り直し?ポリスマンになり?四台のパトカーを操りながら交通違反者を逮捕したり?しかしインディーズの偽警官である事が発覚?セガールはライヤー中のライヤーで突然表舞台から姿を消したり?などなど、あまりに狂人めいたセガール情報ばかりで、自分のリスニング力が疑わしくなるばかりだ。そしてセガール話の締め括りに以下の動画を見せてくれた。

「Steven Seagal Runs Like a Girl」和訳すれば「セガールの女走り」だろうか。

なんでも米国では「ルンルン」的姿勢をとったまま走る姿を「セガールのように走る」と形容するとの話だ。・・・先生、それ本当ですか?

相当怪しいところだが、この動画を見ているうち常に女走りのセガールが愛らしく思えて来始めた。仕事もはかどりそうな気がする。今日も予習(注1)含めて朝4時半起き。かなりの苦しみと痛みを伴う英会話教室だが、このような実りが多いので辛抱強く通う気でいる。

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(注1)先週、先生が映画「コナン・ザ・グレート」(1982年アメリカ映画・主演アーノルド・シュワルツェネッガー)をいかに愛しているかを熱っぽく語っていた。即、映画のセリフを引用したプリントまで配られた。我々のリレーションシップ的にこれを見ずにはいられない王手のかかった状態となったので朝四時半に起床&試聴。非常に面白かった。


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